自宅で家電製品を使用する際、コンセントがアース付きかどうか意識したことはあるでしょうか。
結論を先にお伝えすると、家電製品によってはアースを付けないと感電してしまうケースもあります。
ここでは、アースについて役割から重要性についてまで詳しく解説し、実際に工事をするとどのくらいの費用がかかるのかも解説します。
意外と知られていないアースですが、日常生活を安全に過ごすために欠かせない装置なので、この機会にしっかりと理解しておきましょう。
そもそもアースとは何か?
まず、そもそもアースとはどういった用途で用いられているものなのか、またはアースを用いることでどのようなメリットがあるのか解説していきます。
日常生活の中で、何気なく使われているアースという言葉ですが、内容を知ればその役割の重要性について知ることができるので、まずは全体像を抑えておきましょう。
アースとは家電と地面を繋げる金属線
アース線は家電と地面を繋ぎ、家電から流れる電流を地面に放出する役割を持つ金属線です。
例えば、家電製品から漏電が発生した場合でも、コンセントにアース線がついていれば、地面への逃げ道を作ってくれるので、人間が感電するリスクが減少します。
つまり、アース線は家電製品からの電気で感電することを防ぐ、安全装置としての役割を持った金属線なのです。
ここでいうアースとは、英語のEarth(地面)を指しており、自宅の家電と地面をつなぐ役割を名前でも表現しています。
ただ、実際にアース線が直接地面に接続されているわけではなく、コンセントを経由して地面へと電気を流しているのです。
そのため、一般家庭でよく見るような2口のコンセントではアース線を設置できないので、アース線を新設する場合は、新たにアース付きコンセントに交換する必要があります。
アースを取り付けるメリット
アース線を取り付けることで得られるメリットは以下の通りです。
①家電製品からの漏電を防ぐことができる
冒頭でも申し上げた通り、アース線は地面と家電をつなぐ役割を持つため、漏電による感電を防止する効果を持っています。
後述しますが、特に電子レンジなどの水回りに設置されている家電は濡れた手で作業することもあり、感電する可能性がより高くなります。
アースがついていれば漏電だけでなく、万が一感電した場合のリスクも防ぐことができるので、安全を確保するためにも必ず設置するようにしましょう。
②トラッキング火災の防止
トラッキング火災とは、コンセントに長時間差しっぱなしにすることで、コンセントとプラグのわずかな隙間にほこりが溜まり、コンセントからの電流で発火してしまうという現象のことを言います。
そして、トラッキング火災を発見した時に、慌ててコンセントを引き抜こうとすると、感電する危険性が高くなります。
アース線は人体よりも10倍近く電気が流れやすい仕組みになっているので、万が一感電しても大半の電気はアース側に流れていきます。
しかし、一番重要なのはトラッキング火災を起こさないことなので、定期的な清掃の実施とほこりがたまらない加工をあらかじめ施すようにしておきましょう。
③電磁波による影響を軽減させる
目に見えないため普段は意識しにくいですが、家電製品は電磁波を発しています。
特に電子レンジは他の家電よりも発している電波が強く、人によっては頭痛や吐き気などの体調不良の原因につながる恐れがあると言われています。
その点、アースが取り付けられていれば、アース線が逃げ道なって電磁波を緩和できるので、電気ノイズなどの影響を軽減できる可能性が高まります。
上記のようにアースにはさまざまなメリットがありますし、逆にアースをつけないと、感電のリスクが上昇するので、極力取り付けるようにしましょう。
アース付きコンセントの外見
一般的なコンセントは、2〜3口のプラグが差し込めるような設計になっていますが、アース付きコンセントの場合は、プラグに加えて専用の差し込み口が存在します。
①プラグ差し込み口の他にフタがついているパターン
このパターンの場合は、プラグ差し込み口の直下に開閉できるフタがついていて、フタの中にアースが差し込めるようになっています。
ぱっと見では普通のコンセントとの違いがわかりづらいので、フタがついているのかどうか確認してみましょう。
②コンセントのプラグが3口になっているパターン
通常のコンセントプラグは2口ですが、アース付きのプラグになると、2口の差し込部分の真下にもう1口差し込みが増えて、そこがアースの接続先になります。
いずれにせよ、コンセントの形状というのは通常あまり意識しない部分なので、この機会に自宅のコンセントがどのような形状になっているのか確認してみましょう。
アース付きコンセントが必要なケース
ここでは、アース付きコンセントが必要なケースについて紹介します。
コンセントを取り付ける場所によってはアースの取り付けが法律で義務付けられている箇所もあります。
自宅で使用しているコンセントが該当するかどうかも含めて確認してみましょう。
水回りなどの漏電リスクが高い場所で使用する
アース付きコンセントは水回りで家電を扱う際に一番用いられることが多いです。
具体的には以下の家電を使用する際はアースの取り付けが必須になります。
- 電子レンジ
- 冷蔵庫
- 洗濯機・乾燥機
- 温水洗浄便座
上記のような水回りの他にも、設置場所の湿気や結露が多い場合は、通常よりも電気が通りやすい場所になっているので、アースの取り付けが必須になると言えるでしょう。
アースがないと家電は使えないのか?
結論を先にお伝えすると、アースがなくても家電製品を使用することは可能です。
例えば、アースの取り付けが義務化になる前に建てられた住宅でも最新家電が使用できるように、アースの取り付けは家電製品の使用条件に該当するわけではありません。
しかし、上記でもお伝えしたように、水回りで使用する家電や、湿気の多いところで家電を使う場合は漏電のリスクが上昇するため、アースがないと危険なことには変わりありません。
使用できるかどうかではなく、安全面を考慮して取り付けるようにしましょう。
アース取付工事の費用相場
続いて、アース取付工事について、パターン別の費用相場を解説します。
アースを新しく取り付ける場合は、自宅の環境によって工事内容が異なるので、発生する費用もそれぞれ異なります。
業者に依頼する際は自宅の使用環境を事前に説明し、どのくらいの金額がかかるのかヒアリングしておきましょう。
新規でD種設接地工事を実施する場合
新規でD種設置工事を実施する場合の費用相場は、15,000円〜が目安となります。
ちなみに、D種設置工事とは300V以下の低圧電気機械器具、金属製外箱や金属管に接地を施す工事を指します。
もう少し噛み砕いて説明すると、D種接地工事では、地面に電気を逃すための電気棒を打ち込んで、電気機器と大地を電気的に接続する工事を行います。
ちなみに、接地工事にはA種、B種、C種、D種の4種類存在しますが、家庭で使用する電気機器は200V以下が大半なので、基本はD種接地工事が該当します。
また、工事のざっくりとした流れは以下のようになります。
- 接地極(電気を逃すための電気棒)を地面に打ち込む(地下75cm以上に埋設)
- 接地線を引き出す(サイズが1.6mm以上のものを使用する)
- 電気機器と接地線を接続する
無論、D種接地工事は電気工事士の資格が必須となる上、専門的な技術が必要なので、安易に挑戦しようとせず、プロの電気屋さんに依頼しましょう。
分電盤からアース線を引き込む場合
各コンセントにアース線の引き込み処理がされていない場合は、まず分電盤から引き込みの処理を行う必要があります。
コンセントの数など、自宅の状況によって料金は変動しますが、費用の目安としては10,000円〜30,000円前後の金額が多い印象です。
いずれにしても、現在の状況を電気屋さんに見せれば明確な金額が出てくるので、まずは現調を依頼してみると良いでしょう。※現調は有料のケースもあるので確認してから依頼することをおすすめします。
アース端子付きコンセントに交換する場合
コンセントまでアース線の処理がされているのであれば、アース端子付きのコンセントに交換する工事でOKです。
その場合、費用の目安は5,000円〜10,000円前後が目安となります。
アースの工事を依頼する際は、配線や設備の状況を聞かれるのであらかじめ確認し、自分で判断が難しい場合は現調を依頼してみましょう。
アース付きコンセントを導入する流れ
ここでは、アース付きコンセントを実際に導入する流れについて解説します。
アース付きコンセントは専門的な電気工事が必要なので、素人では絶対に行ってはいけません。
また、どういった業者に頼めば良いかの判断も難しいので、詳しく解説していきます。
工事は必ず有資格者に依頼する
上記でも申し上げましたが、アース付きコンセントは専門的な技術と知識が必要なだけではなく、「電気工事士」の資格が必要となります。
もし、有資格者でない方が工事をすると法律違反に該当する可能性もあるため、実際に工事をしてもらう時には工事担当者の電気工事士の免許を確認させてもらうと良いでしょう。
※運転免許証と同じく、電気工事士の免状は携帯義務があるので通常であれば持っています。
また、電気工事士の取得をしたからといって、すぐに工事ができるようになるわけではありません。
最初の内はできるだけ経験者に教わるなどして、安全に実務経験を積むようにしましょう。
業者は一つに絞らず複数検討する
インターネットの大幅な普及により、昔よりも電気業者の選択肢が増えています。
もちろん、昔から依頼している電気屋さんに直接依頼するのもOKですが、市場の適正な価格を知るという意味でも、複数業者を検討することをおすすめします。
そして、アース工事をはじめ電気工事を依頼できるのは以下の業者です。
①ネット業者
最近ではネットで依頼できる業者に加え、「くらしのマーケット」などのプラットフォームから、各種工事を依頼することも可能です。
いろんな業者を価格、口コミなどで検索することができるため、自分に合った業者を選びやすく、ネットで申し込みできるので手間なく依頼することができます。
②近所の電気店
いわゆる町の電気屋さんです。
地元に密着しているので、比較的相談しやすい店舗が多い印象があります。
かかりつけのようなイメージなので、自宅の電気周りのことをいろいろ相談できるメリットがあります。
③ホームセンターや近所の家電量販店
電化製品を扱っているので同時に工事も実施してもらえます。
以前は、工事に関連する商品を購入しないと工事しないケースが多かったのですが、最近ではリフォーム需要が増えている背景から、自社で工事をする店舗が増えてきたので、工事のみでも相談しやすくなりました。
費用については工事内容や店舗によってさまざまですが、他に目的の商品があればトータルで値引き交渉がしやすくなるので、例えば工事だけでなく電子レンジも買い替えたいという方は、一度相談してみると良いでしょう。
相見積もりは2〜3社から取るのがおすすめ
もし、工事の相見積りをするのなら、2〜3社くらいにしておくと良いでしょう。
検討材料が多いに越した事はありませんが、数を増やしすぎると業者対応が大変になってしまうので注意が必要です。
また、アース工事だと見積りではなく現地にそのまま行って工事することも多いので、その場合は先に概算の値段を確認しておくようにしましょう。
値段だけでなく総合的に安心できる業者に依頼しましょう。
最終的に一つの業者に依頼する形になりますが、その際は口コミやアフターフォローなども判断材料に入れましょう。
近年では自分達の利益だけを考えた悪徳業者も少なからず存在するので、引っかからないためにもいろんな要素から判断できるようにしましょう。
SNSなどの口コミなど、実際に利用した方の口コミを参考にするのも良いでしょう。
アースが取り付けられない場合は漏電遮断器を使う
ここまでアースの重要性や取付費用の相場について解説してきましたが、壁を取り壊すことができないなど、場合によってはアースが取り付けられないケースも存在します。
そういった場合は漏電遮断器を使うと、万が一漏電した際に電気供給をストップしてくれるので、アースの代わりとなります。
ただ、本質的には電気を逃すわけではないので、取り付けができるのであればやはりアースをおすすめします。
まとめ
- アースは漏電防止するために必要な装置
- アースの取り付け工事費用は配線の状況によって異なる
- いろんな手段を使って自分に合った業者を選択しましょう
アースを取り付けることで費用は発生しますが、より安全に生活するためには設置が必須と言っても過言ではありません。
業者を選ぶ際にも、いろんな要素から検討して、自分に合った業者を選ぶようにしましょう。