エコキュートは各種ある給湯器機の中でも、簡単便利で家計に優しい点が評価されてきました。
最近では環境意識の高まりも受けて、エコキュートを導入する家庭は増加しています。
しかし、エコキュート導入にあたって、追い焚き機能がないと不便だからと、導入をためらう声も聞くことがあります。
結論から言うと、エコキュートに追い焚き機能がないというのは誤解です。
ではなぜエコキュートは追い焚き機能がないかのような誤解が生まれるのでしょうか。
それは、エコキュートの仕組みにあります。
今回は、従来の給湯器とは異なるがためにわかりにくい部分もあるエコキュートの仕組みや便利なシステムについて、わかりやすく解説します。
Contents
エコキュートがお湯を沸かす仕組み
エコキュートには様々な機能が搭載されています。
それらの便利でより経済的な使い方を理解するために、まずはエコキュートがどのような仕組みでお湯を作るのか、理解を深めておきましょう。
エコキュートがお湯を作る要はヒートポンプシステム
エコキュートは、ヒートポンプシステムと呼ばれる仕組みを使ってお湯を沸かしています。
ヒートポンプシステムというと聞き慣れないかもしれません。
ヒートポンプシステムとは、多くの家庭に設置されているエアコンでも使われている仕組みのことを言います。
簡単に説明するとエコキュートの場合は、熱交換器という機器を搭載しています。
この熱交換器は外の空気から熱エネルギーを取り込み、その熱で水を沸かしてお湯を作り出しています。
これがヒートポンプシステムです。
80度近くまで沸いたお湯は、貯湯タンクに貯蔵されます。
お湯を使う時は、この貯湯タンクの熱湯に水を混ぜ、あらかじめ設定した温度のお湯に調整しているので、いつでも快適な温度のお湯を利用できるという仕組みです。
エコキュートが家計に優しい理由
エコキュートでは、深夜の時間帯に電気代がガス代よりも安くなるプランと併用します。
そして、電気代が安い深夜の時間帯にまとめてその日1日分のお湯を沸かし、貯湯タンクに貯めています。
そのためエコキュートなら、電気代はお得なままに、いつでも快適な温度のお湯を使うことができるのです。
エコキュートはどうやって追い焚きするのか?
エコキュートがお湯を作る仕組みを知ると、こんな疑問が湧いてくるのではないでしょうか。
「あらかじめ沸かして貯め置きした熱湯に適量の水を混ぜているなら、どうやって追い焚きするのだろうか?」
冒頭でエコキュートは追い焚きできると申し上げました。
ただ厳密には、追い焚きできる機種とできない機種があります。
追い焚きできる機種を用いれば、追い焚きだけではなく、足し湯といった機能を使うこともできます。
エコキュートには機能によって3タイプある
エコキュートには、搭載されている機能によって大きく以下の3つのタイプがあります。
- フルオート
- オートタイプ
- 給湯専用タイプ
エコキュートタイプ | 主な機能 | 追い焚き | 足し湯 |
---|---|---|---|
フルオートタイプ | お湯張りが自動でできる追い焚きや足し湯ができる | ○ | ○ |
オートタイプ | お湯張りだけ自動的にできる | × | × |
給湯専用タイプ | シンプルに蛇口から浴槽へお湯を落とし込む | × | × |
フルオートタイプのエコキュートを導入すれば、お湯張りだけではなく追い焚きも足し湯も使うことができます。
エコキュートで追い焚きできる仕組み
エコキュートにおける追い焚きとは、今浴槽に入っているお湯を沸かし直すことです。
こう聞くと、貯湯タンク内の綺麗なお湯と浴槽内のお湯が混ざってしまうのではないかと心配する人もいらっしゃるかもしれません。
エコキュートは夜の間に作っておいた熱湯を貯湯タンクに貯めておき、適宜水で薄めて利用する給湯システムを採用しています。
そこに浴槽の水を取り込むと考えると、不安になるのも仕方ないでしょう。
しかし、ご心配には及びません。
エコキュートでは、追い焚きの際に貯湯タンク内の熱湯は使うものの、接触することはないように作られています。
追い焚き機能も、貯湯タンクのお湯を使います。
ただし、使用するのは貯湯タンク内の熱湯から発せられる熱です。
この熱を熱交換器を介して、浴槽のぬるいお湯に移すことで、お湯を温め直します。
このため、浴槽内のぬるいお湯が貯湯タンク内の熱湯に直接触れることは一切ありません。
浴槽のぬるくなったお湯は、貯湯タンク内の熱湯から発せられる熱だけを持って、再び浴槽に戻されます。
エコキュートで追い焚きするメリット
エコキュートの追い焚き機能のメリットは、自動追い焚きとも呼ばれる保温機能と併せて使うことで最大限に発揮されます。
自動追い焚き機能を使えば、湯温があっという間に下がる寒い季節でも、家族全員が常に暖かく快適な温度のお湯に浸かって冷えた体をほぐすことができるでしょう。
自動追い焚き機能がメリットになるケース
- 家族が多く、全員がお風呂に入り切るのに時間がかかるご家庭
- 浴槽の湯温があっという間に下がる寒冷地域
- 気温の低い季節
- 長湯してお風呂でくつろぎたい時
リラックスタイムは、お風呂にお気に入りの本を持ち込んで長湯したい。
そんな時にも、エコキュートの追い焚き機能が大活躍です。
最後まで快適な温度に湯温を保ちます。
エコキュートで追い焚きするデメリット
エコキュートの追い焚き機能はとても便利です。
いつでも暖かいお湯に満たされた浴槽を維持することもできるので、生活の質をグンと向上させることでしょう。
しかし、この便利な機能ですが、避けられない欠点もあります。
エコキュートで追い焚きするデメリット1:貯湯タンクのお湯が減る
エコキュートの追い焚き機能を使うことの最大のデメリットは、貯湯タンクの湯量が減ることでしょう。
しかし先ほど、エコキュートの追い焚きは、熱交換器を使うことで貯湯タンク内のお湯と追い焚きする浴槽のお湯が混ざることはないと説明しました。
では、なぜ使わないはずの貯湯タンクが減るのでしょうか。
これには、エコキュート特有の仕組み知っておく必要があります。
エコキュートにおいて貯湯タンク内のお湯の量とは、あらかじめ設定した温度の熱湯の分量を意味します。
そのため貯湯タンクの湯温が下がった場合、お湯の量自体は変わっていませんが、使えるお湯(熱湯)の量は減少したことになります。
では、なぜ貯湯タンクの湯温は下がったのでしょうか。
それは追い焚きする際に、貯湯タンクの湯が発する熱を、浴槽の湯に移したためです。
追い焚きする湯量が多いほど、貯湯タンクの熱湯の熱はより多く奪われ、それに伴って貯湯タンクの湯温は下がります。
水1グラムの温度を1度上げるためには、1キロカロリーの熱量が必要です。
10リットルの水を0度から100度まで上げる場合、1,000キロカロリーが必要と考えられます。
1,000キロカロリーというと、成人が1日に必要な総カロリー摂取量の半分近く。
とは言っても、浴槽内の湯なので、何十度も温度を上げる必要はないでしょう。
しかし分量が多いので、その分大量の熱を必要とすることが分かります。
こういった理由から、エコキュートで追い焚きすると貯湯タンク内の湯温が下がるため、結果として使えるお湯の量が減るのです。
エコキュートで追い焚きするデメリット2:貯湯タンクのお湯が少ないと追い焚きできない
先に解説したように、エコキュートで追い焚きするためには大量の熱湯が必要です。
そのため、貯湯タンク内の湯量が少ないと、追い焚きできないことがあります。
また何度も追い焚きしたなどの理由で貯湯タンク内の湯温が下がっている場合も同様に、エコキュートの追い焚き機能を使うことはできません。
エコキュートの追い焚き機能を使う際は、貯湯タンクのお湯の残量と温度に注意しましょう。
追い焚きするつもりが、貯湯タンクのお湯の量や温度が足りず、ぬるいお風呂に入らなければならない、といった事態にも陥りかねません。
エコキュートで追い焚きするデメリット3:追い焚きするのに時間がかかる
一般的な給湯器の追い焚き機能というと、ガス給湯器による追い焚きを連想するのではないでしょうか。
ガス給湯器で追い焚きする時は、浴槽のお湯はあっという間に追い焚きされます。
気をつけていないと高温になりすぎることもあるくらいです。
しかし、エコキュートの場合は、追い焚きにかなりの時間を要します。
お湯の量や温度によっては、数十分程度の時間を要するケースも考えられるでしょう。
湯船に浸かってお湯の温度が下がり始めたからと追い焚きをしても、エコキュートの場合はお湯が沸き上がるまでに時間がかかるので、湯冷めする可能性もあります。
エコキュートは電気給湯器です。
ガス給湯器よりも環境負荷が低くエコではあるものの、お湯を作り出すまでに時間がかかります。
この点を念頭に置くと、エコキュートをうまく活用できるでしょう。
冬場など気温が低く浴槽内の湯温があっという間に下がる時期は、保温機能である自動追い焚きを活用して、快適なバスタイムを過ごしてみてください。
エコキュートの追い焚き機能以外のお湯を温める3つの方法
エコキュートには、追い焚き機能の他にぬるくなったお湯を温める方法があります。
- 保温機能(自動追い焚き)
- 足し湯
- 高温足し湯
この3つについて、詳しくみていきましょう。
エコキュートの保温機能(自動追い焚き)とは
エコキュートの保温機能(自動追い焚き)を活用すれば、いつでも設定した温度の暖かいお湯を浴槽に満たすことができます。
家族が多く、全員がお風呂に入り終わるまでに時間がかかるご家庭や、気温の低い冬季、寒冷地域においては非常に便利な機能です。
エコキュートの保温機能のメリットとデメリットをまとめたものが以下の表です。
メリット | デメリット |
---|---|
いつでも暖かなお湯に浸かれる | 貯湯タンク内の湯温が下がる貯湯タンク内の湯が減る追加の電気代がかかる追加の水道代がかかることがある |
エコキュートの保温機能を活用すれば、いつでも暖かなお湯に浸かることができます。
その反面、お湯を一定温度に保ち続けるために追い焚きし続けることによって、貯湯タンク内の湯温は低下し、使用できる貯湯タンク内の湯量も減少してしまいます。
また追い焚きし続けることにより電気代もかかります。
さらに、湯量が足りなくなった場合お湯を沸かし直さなければならない可能性もあります。
お湯を沸かし直す時間帯が電気代が割高な時間帯に当たった場合、より一層電気代がかかるでしょうし、水道代もかかります。
電気代の安い深夜帯にまとめてお湯を沸かして貯めておくことで、エコキュートはリーズナブルに快適な暮らしを提供できるシステムです。
保温機能(自動追い焚き)を使いすぎることでお湯を沸かし直すことになれば、エコキュートの利点は台無しになってしまうかもしれません。
エコキュートの保温機能(自動追い焚き)も、追い焚き同様便利な機能です。
ただ使用頻度が高いとデメリットが大きくなるので、注意が必要です。
エコキュートの足し湯・高温足し湯機能とは
エコキュートには足し湯と高温足し湯という機能が搭載されています。
そして足し湯や高温足し湯機能は、各エコキュートの機器を提供するメーカーがお湯を温め直すために活用することを推奨している機能です。
足し湯と高温足し湯について、詳しく紹介します。
足し湯・高温足し湯の仕組み
エコキュートの足し湯・高温足し湯ともに、貯湯タンク内のお湯を使う点では同じです。
ただし足し湯と熱湯足し湯では、浴槽に流し込むお湯の温度が異なります。
足し湯の場合は、貯湯タンク内の熱湯に水を混ぜて、設定された温度に調整した水を出します。
一方の高温足し湯では、貯湯タンク内の熱湯をそのまま浴槽に流し込みます。
足し湯・高温足し湯のメリット・デメリット
エコキュートの足し湯と高温足し湯のメリットとデメリットも表で比較していきましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
すぐにお湯を温め直せる追加の水道代がかからない追加の電気代がかからないその時の気分や体調に合わせて湯温を調整できる | 貯湯タンク内の湯量が減る |
エコキュートの足し湯・高温足し湯の最大のメリットは、すぐにお湯を温め直せる点です。
浴槽の湯温がかなり低い場合や湯量が多い場合は、高温足し湯で熱湯を、少しだけ温めたい場合や浴槽の湯量が少ない場合は、足し湯で適温に調整したお湯を足すだけで、すぐに快適なバスタイムにすることができるでしょう。
追い焚きのように、沸き上がるまで待つ必要もありません。
忙しい毎日のバスタイムを、ノンストレスに快適に過ごせるでしょう。
足し湯・高温足し湯ともに、貯湯タンク内のお湯を使います。
そのため貯湯タンク内の湯量が減るというデメリットは避けることはできません。
しかし追加で電気代がかかることはありません。
足し湯の場合は湯温の調整度合いによって多少の水道代はかかるものの、ごくわずか済ますことができるでしょう。
また、
「少し熱めにしたい、もしくはぬるめにしたい」
「半身浴程度で良い、もしくは肩までしっかり浸かりたい」
などこういった、その時の気分や体調、季節に合わせた湯量や湯温の調整が可能なのも、足し湯と高温足し湯ならではのメリットです。
エコキュートの足し湯・高温足し湯いずれの場合も、貯湯タンクのお湯を消費します。
使い過ぎには注意しながら、お湯の温め直しにぜひご活用ください。
エコキュートをより経済的に使うために押さえておきたい5つのポイント
簡単便利で家計にも優しい仕組みを搭載したエコキュートの特性を知ることで、より一層便利にリーズナブルに利用することができるでしょう。
給湯設備は毎日使うものですから、毎日の小さな節約が、大きな節約につながることとなります。
エコキュートをお得に使う方法1:季節ごとに設定を見直す
便利なエコキュートですが、1年中同じ設定のままで使っていては損するかもしれません。
エコキュートには、省エネモードが搭載されています。
もちろんこの省エネモードが、基本的には最もお得な設定です。
ただ、お湯を使う量が増えてお湯が足りなくなって沸かし直すことが増える季節や時期には、省エネモードから、多めにお湯を沸かす設定にしておく方がよりお得です。
エコキュートは、深夜の電気代が割安な時間帯に1日分のお湯を沸かします。
この電気代が安い時間帯に、多めにお湯を沸かしておけば、日中の電気代が割高な時間にお湯を沸かし直すよりも経済的です。
もしお湯を使う量が減ってお湯が余るようになれば、その時は省エネモードに戻しておくと、より良いでしょう。
季節やお湯の使用量に合わせて設定を一つ変えるだけで、電気代を大幅に節約できるのは嬉しいポイントです。
エコキュートをお得に使う方法2:お湯を使わない時は昼間沸き上げを止める
エコキュートでは、貯湯タンク内のお湯が少なくなると、自動的にお湯を沸かし足す機能が搭載されています。
お湯が足りなくならないための便利な仕組みです。
しかし、「もうこれ以上今日はお湯を使わないのでお湯を足す必要がない」という時には、自動沸き増し機能はオフにしておきましょう。
無駄にお湯を沸かすことを防ぎ、電気代水道代を節約することができます。
エコキュートをお得に使う方法3:追い焚きではなく足し湯を使う
浴槽のお湯の温度が冷めてしまって温め直したい。
そんな時は、時間もコストもかかる追い焚きではなく、すぐにお湯を温め直せる上に低コストな足し湯を活用しましょう。
エコキュートをお得に使う方法4:電気代が割安な時間帯にのみお湯を沸かす
エコキュートを導入する際は、ほとんどのケースで深夜帯に電気料金が安くなるプランを採用しているでしょう。
このプランでは、深夜の時間帯の電気料金がガス代よりも安くなる代わりに、日中の電気料金はかなり割高に設定されています。
使用するお湯の量が増えそうだとあらかじめ分かっている時は、あらかじめ深夜に沸かす湯量を増やすなどして、電気代の高い時間帯にお湯を沸かさないように心がけることが大切です。
エコキュートをお得に使う方法5:不在が続く時は休止モードに設定する
数日間以上家を空ける場合は、エコキュートを休止モードに設定することで、給湯設備を使わない期間の電気代を節約できます。
また長期間家を空ける場合は水抜きも行えば、貯湯タンクなどの設備の傷みを遅らせ、長く安全に使用できるでしょう。
まとめ
エコキュートにも、ガス給湯器のように追い焚き機能が搭載されています。
ただしエコキュートの構造上、時間とコストがかかるのはデメリットです。
エコキュートには、追い焚き機能の他、足し湯や高温足し湯というシステムもあります。
ご自身の用途に合わせて、エコキュートの設定をカスタマイズして、より快適な暮らしにお役立てください。