家庭の電力が自由化になって以来、話題とされてきたスマートメーターですが、そもそもスマートメーターとは何なのか、従来の電力メーターとはどのような違いがあるのか、よくわからないまま過ごしている、という方も多いのではないでしょうか。
結論を先にお伝えすると、スマートメーターは今後取り付けが必須となる電力メーターであり、設置することで得られるメリットがたくさんあるので、知っておいて損はありません。
そこで、今回の記事ではスマートメータについて、従来の電力メーターとどのように違うのか、特徴やメリットに触れながら解説していきます。
Contents
スマートメーターとは
スマートメーターは、電気の使用量をデジタルで表記する電力メーターの一種です。
通信機能を備えているので、電力会社のサーバーにアクセスし、電力の使用量データを送信することができます。
なお、電力使用量のデータは30分ごとにサーバーに送られているため、細かなデータを計測することも可能です。
※昨今では、オール電化住宅のスマート家電とスマートメーターを組み合わせることによって、より手軽に電力の「見える化」を実現できるようになりました。
ちなみに、スマートメーターの中でも、ユニット式と一体型の2種類がありますが、利用者から見た違いは見た目だけなので、特に気にしなくても大丈夫です。
※ユニット式と一体型のどちらが選ばれるかは、地域ごとによって異なります。
また、スマートメーターは基本的には無線で通信するタイプ(Wi -SUN型)がほとんどですが、一部マンションなどでは有線タイプ(G3-PLC型)も存在します。
電波が届かないなど、地域によって一定の事情がある場合に有線タイプが選択されるようです。
従来の電力メーターとの違い
では、実際にスマートメーターにするとどのような違いが出るかについて、従来の電力メーターと比較しながら解説します
電力の表示方法
目に見える変化として一番大きいのが使用電力を表示させる方法です。
従来の電力メーターは、円盤がついており、電力を使用する度に円盤が回転する仕組みになっています。
また、円盤が回転すると連動して電力使用量を測定し、ダイヤル式で数値化します。
従来型の電力メーターは表面が透明になっているので、外から簡単に電力使用量を確認することができます。
一方、スマートメーターは冒頭でお伝えした通りデジタル方式の電力メーターとなります。
スマートメーターには従来の電力メーターにはあった円盤がついていないので、見た目にも違いがあるのが特徴です。
※なので、自宅がスマートメーターを使用しているかどうかは円盤有無で判断する形でOKです。
また、スマートメーターで表示される電力使用量は、今まで使用した電力を積算したものになり、大きな数字に見えてしまうので注意です。
※電気料金を計算するときは、前月の数値と今月の数値の差分で出しているのでご安心ください。
また、太陽光発電などの発電も行っているような場合には、別画面で発電設備込みの消費電力を確認することも可能です。
検針の方法
従来の電力メーターを使用している場合は、担当の検針が月に一度訪問して、メーターに表記されている電力使用量を記録するなどの検針作業を実施する必要がありました。
一方、スマートメーターの場合、通信機能がついており、人を介さずとも各電力会社のサーバーにアクセスして使用電力の情報を30分に一度送るので、現地を訪問しての検針作業が不要となりました。
スマートメーターを設置するタイミング
普及がどんどん進んでいるスマートメーターですが、現時点で従来型の電力メーターを使用している方にとっては、いつスマートメーターを設置すれば良いのかタイミングがつかめない方が多いと思います。
なので、ここではスマートメーターを設置するタイミングについて、複数事例を紹介しながら解説していきます。
家を新築するとき
基本的に現在新築で建つ家はスマートメーターが前提となるので問題ないですが、現在従来型の電力メーターを使用していて、家を建て替えたり新築する場合はスマートメーターに切り替えるタイミングと言えます。
また、電力もそのタイミングで選び直したりすると住み始めてからスムーズなので、一緒に検討すると良いでしょう。
電力会社を変更するとき
現在使用している電力会社から別のところへ切り替えると、そのタイミングでスマートメーターが設置されます。
なので、現在電力会社の変更を検討している方は、電力会社を変えたタイミングで切り替わることを認識しておきましょう。
電力会社を変更する際、万が一担当者からスマートメーター切り替えについての言及がなかった場合は、念押しで確認しておくと安心です。
電力使用量をリアルタイムで確認するプランに申し込んだとき
電力使用量をリアルタイムで確認できる、電力メーター情報システム(通称:Bルートサービス)のプランに申し込むにはスマートメーターが必須となるので、新たに設置するタイミングと言えるでしょう。
また、電力メーター情報サービスは、電力使用量を測定するだけではなく、測定した結果をHEMS(HomeEnergyManagementSystem)に送信してくれます。
ちなみに、HEMSは、家庭で使用している電力やガスなどのエネルギー使用を管理するシステムです。電力機器とHEMSを繋げることによって使用量を可視化し、制御することができます。
従来の電力メーターの有効期限が切れたとき
従来型の電力メーターは有効期限が約5〜10年で設定されているので、設定された期間が満了したらスマートメーターへ自動的に取り替えとなります。
※有効期限は設置されている電力メーターの種類によって異なります。
なお、現在使用している電力メーターには検定ラベルが張られているので、そこで残りの有効期限を確認することが可能です。
もし、検定ラベルが張っていない場合は、管轄の電力会社に連絡してみましょう。
基本的には有効期限が切れると電力会社からスマートメーターへの取り替えのお知らせということで電話で連絡がきます。
この時、スマートメーターの取り替えと騙って、電力会社の変更などの勧誘をしてくる業者もいるので注意しましょう。
もし、スマートメーターの取り替え以外の勧誘等があった場合は、その場で断り、消費者センター等に相談するようにしましょう。
万が一契約を結んでしまった場合でも、クーリング・オフの制度を使って解約できるケースもあるので、気づいた時点で消費者センターに電話するなどして、早めに対処するようにしましょう。
スマートメーターの設置業者とは
スマートメーターにしたいと思ってもどこに依頼したら良いかわからないという方が大半ではないでしょうか。
スマートメーターを設置するのは、基本的に地域で送電を行っている電力会社が委託している工事会社が実施します。
設置するタイミングは基本的に上記で紹介したような、いずれかのケースが発生した場合でOKなので、スマートメーターの設置のためだけに連絡するなどはしなくてもOKです。
ちなみに、スマートメーターの工事は屋外で実施できるので、不在にしていても実施してもらえる場合があります。
※不在の場合でも実施するかどうかは業者によって異なるので、事前にヒアリングしておきましょう。
設置費用は基本的に費用請求をすることはなく、事務手数料をとられる可能性も一部ありますが、大金を請求されるケースはまずありません。
前述しましたが、最近では設置業者を騙って高額な費用を請求する悪徳業者も増えてきているので注意しましょう。
スマートメーターのメリット
続いて、スマートメーターを取り付けるメリットについて紹介します。
結論を先にお伝えすると、従来型の電力メーターからスマートメーターに変更すると多くのメリットが受けられるので、それぞれしっかりとおさえておきましょう。
検針員による測定作業が不要になる
冒頭でもお伝えしましたが、スマートメーターは電力データを専用のサーバーに送信するので、電力使用量を遠隔で確認できるため、検針員が現地に向かう手間がへり、人件費の削減にも繋がっています。
ちなみに、スマートメーターが普及していけば、年間で数百億円以上の人件費削減が想定されるので、今後も普及を推し進める流れになるでしょう。
また、利用者側にとっても、場合によっては立ち会いが必要だったり、留守中に検針員が訪問することもあったので、心理的な負担を感じる方も多いのではないかと思います。
使用電力がわかるので省エネの意識が高まる
冒頭で解説した、HEMSの機能を使えば、自宅のエネルギーの利用状況が「見える化」し、インターネット回線を通じて気軽に確認できるため、利用者の省エネ意識が高まることもメリットの一つです。
従来は、使用した電力明細が金額とともに事後的に送られてくるため、実際の数値に触れる機会が少なく、使用電力を意識しながら生活できる人は限られていたでしょう。
しかし、スマートメーターとHEMSの連携機能を活用すれば、リアルタイムで使用している電力エネルギーが明確になるので、電力を抑えようとする意識が高くなり、結果として省エネ効果に繋がります。
エネルギー不足が危惧されているので、スマートメーター導入による見える化は、全体にとって大きなメリットとなりそうです。
ブレーカー機能がついているので停電時の復旧がスムーズになる
スマートメーターにはアンペアブレーカーが組み込まれており、10秒ほど経過すると自動で復旧してくれます。
従来は、停電すると暗闇の中ブレーカーの上げにいく、といった経験をされた方も多いと思いますが、スマートメーターはその作業を自動で行ってくれるので、いざというときに重宝する機能と言えるでしょう。
アンペア契約の変更が簡単になる
従来は、家族が増えたなどの理由でアンペアを増やしたりするにはアンペアブレーカーの交換が必要でしたが、スマートメーターの場合は申し込みをすれば遠隔での変更が可能になります。
つまり、ブレーカーを交換するために作業員が出向く必要がないので、立ち合い等の手間なくアンペア契約の変更が可能となりました。
プランによっては電気代がお得になる場合がある
前述した通り、スマートメーターは30分ごとに電気の使用量を測定しデータを飛ばすことができるので、時間帯ごとに電力料金を変動させるプランなどが可能となりました。
スマートメーターの機能によりプランの選択肢が増えたため、個人の生活様式に合ったお得なプランを選ぶことができるようになったのは大きなメリットです。
電力会社によって提供しているプランは異なりますので、自分の生活スタイルを振り返った上でどのプランが良いか相談してみると良いでしょう。
離れて暮らす家族などの異変に気付きやすくなる
スマートメーターは30分に一度使用電力をデータにして飛ばすので、離れて暮らす家族の電力の使用状況を知ることができます。
使用状況はスマートフォンで確認したり、スマートスピーカーで音声確認もできるので、万が一の異変などにも気付きやすくなり安心です。
スマートメーターのデメリット
スマートメーターを取り付けるにあたっては、基本的に大きなデメリットは考えにくいので、基本的には取り替える方向でOKです。
ただ、後述する個人情報の漏えいや電磁波の影響など、今後課題となりうる可能性があるので、スマートメーターに限らず電力についての最新情報は、随時確認しておくことをおすすめします。
個人情報の漏洩リスク
2022年の4月に改正した電気事業法により、従来は電気料金の請求等以外で電力データを使用することを禁じられていましたが、以後は本人の同意があれば企業に提供できるようになり、ビジネスとしての利用ができるようになりました。
個人の電力データを活用することによって、宅配業者の配達効率の向上、高齢者や離れて暮らす家族の様子がわかる、いわゆる「見守りサービス」の質の向上に繋がります。
一方、電力データで在宅情報がわかってしまうことから、個人情報漏洩のリスクも懸念されています。
そのため、情報を一元的に管理するシステムなどを実装するのが企業側としては望ましいですが、コストの観点等から完全実現するには時間がかかりそうなのも事実です。
まだ改正後間もないので、今後どういった検討がなされるのか動向を見守る必要がありそう
です。
スマートメーターから発する電磁波の影響
スマートメーターは通信を行う際、電磁波を発しており、周波数帯は800〜920MHzなので、おおよそ携帯電話やスマートフォント同じ電磁波強度となります。
大半の方は問題ないかもしれませんが、中には電磁波が理由でスマートメーターの設置を拒む方もいらっしゃるので、影響が全くないとは言いがたいのが現状です。
新電力の会社の中には、スマートメーターではなく従来型の電力メーターの設置や、スマートメーターの通信部分(電波を発する部分)だけを抜いて設置するよう対応してくれる業者もあるようなので、気になる方は一度相談してみると良いでしょう。
スマートメーターの今後
スマートメーターは2024年までに100%の設置が目標とされており、現在も続々と設置作業が行われています。
前述したように、スマートメーターには利用者だけではなく、電力会社にとってもメリットが大きくなります。
また、経済産業省では次世代型のスマートメーターの検討も進めているので、今後のさらならるアップデートにも期待が持てそうです。
まとめ
- スマートメーターは従来型の電力メーターに比べさまざまなメリットを享受できる
- 個人情報漏えいリスクや電磁波など、懸念されている課題もある
- 今後もスマートメーターは増大し、より生活が豊かになると見込まれる
ここまでスマートメーターについて解説してきましたが、スマートメーターは省エネだけではなく、生活の安心・安全面でもメリットがあります。
今後、技術の発展とともに、いろんなサービスと連携してより便利な機能が開発されることも期待できます。
また、電力だけではなく、ガスや水道などの他のインフラもスマートメーターのようになる可能性があるので、引き続き情報を追っていくことをおすすめします。