2015年に持続可能な開発目標としてSDGが掲げられて以降、環境への意識が高まり、一般消費者の間でも様々な取り組みがなされています。
「エコキュート」もそのような環境で人気が出た商品の1つであり、省エネルギー対応の給湯器です。
時代の変化に伴い需要が増すエコ製品ですが、普及させたい反面で在庫不足により入手できない状況が続いています。
ここでは「エコキュートに変えようと考えているのに在庫が不足しているのはなぜ?」「エコキュート不足の原因や在庫不足の解消目処は?」などが気になることを解説します。
Contents
エコキュートとは?
エコキュートとは、空気中の熱と電気を利用して効率よくお湯を沸かす「ヒートポンプ方式」を利用する環境配慮型の次世代給湯器の事をいいます。
ヒートポンプ技術自体は冷蔵庫・エアコン・電気ヒーターなどにも使われる身近な技術ですが、エコキュートは空気の熱の力と電気を利用してお湯を沸かすので他の給湯器より圧倒的に効率良くお湯を沸かすことができます。
更に、従来よりも小さいエネルギーでお湯を沸かすので非常に省エネになると注目されている給湯器です。
エコキュートはなぜ電気代が安い?
エコキュートの電気代が安いと言われる主な要因の1つは「ヒートポンプ方式」にあります。
ヒートポンプの方式では前述のように、お湯を沸かすときに空気熱と電気を併用します。
この時のエネルギーは、電気エネルギー1に対して空気熱エネルギーを2以上集めてお湯を沸かします。
この方式により、電気でお湯を沸かすときと比べて三分の一の消費電力でお湯を沸かすことができるようになります。
更にエコキュートは、毎日電気料金が安くなる夜間に必要な量のお湯を沸かし貯油タンクに備蓄します。
日中このお湯を利用して電気料金を制御しながらお湯を保温し供給するので電気代を抑えることができます。
エコキュートが需要増加している背景
エコキュートが非常に人気であると様々な媒体から情報を見聞きするようになりましたが、どのような事が原因なのでしょうか?
主な背景としては次のような事が挙げられます。
災害時に有効なライフラインである
エコキュートが最も強く印象づけて注目を集めたのは、台風・地震・洪水などの自然災害時に電力供給がストップしてもお湯が供給できる点です。
タンクにあらかじめお湯を備蓄しておくので、停電時や不測の際でもそのお湯の熱をキープしてストックする事ができます。
そのため、非常時のライフラインとしてお湯を備えられるということから需要が増えました。
火災リスクの低減
従来の家庭ではガス給湯器の使用が多数でしたが、近年エコキュートに入れ替える人の多くは火災の心配が無くなるという理由で買い替えをしているようです。
ガス給湯器は、火力でお湯を沸かすので少なからず火災などの危険性は付き物です。
不完全燃焼による一酸化炭素中毒などの危険性も稀にあるため、より安全性を求める方にエコキュートは選ばれています。
地球温暖化防止に貢献
エコキュートは自然冷媒にCO2を使用しているため、従来のガス式給湯器に比べてCO2の排出量を60%〜70%削減することができます。
後世に遺す環境との共生は、近年注目されている取り組みなので一般消費者も購入意識が高くなっています。
エコキュートが不足している原因は何?
メリットの多いエコキュートの需要が増加する中で、著しく納期が遅れているという話をよく耳にするのではないでしょうか。
各メーカーは生産体制を増強して売り時を逃さないように対応すれば良いだけと考えられますが、簡単には在庫不足を解消できない事情があるようです。
世界的な「半導体」不足
半導体とは、一定の条件下だけ電気を通す特性を持つ電子部品で、主に電気製品のメモリやセンサー、トランジスタやダイオードなどに使用され近年の電化製品には無くてはならない必須の部品です。
この半導体が不足している要因としては、5G対応のスマートフォンの登場や電気自動車、AIの普及で半導体を使用する製品が急増している事が不足を生んでいると言われています。
特に自動車などでは半導体が非常に多く使用されており、新車を購入すると納期に1年以上かかるなどという声もよく聞きます。
エコキュートでも多くの半導体を使用しており、製品を思った以上に生産できない主要な要因に半導体不足が挙げられます。
主要生産国の東南アジアがロックダウン
エコキュートのメインブレーカー関連部品のほとんどが国内製造ではなく東南アジアで製造されています。
コロナウイルス感染症の影響で、主要生産国である東南アジア諸国の工場がロックダウンの影響で稼働一時停止を余儀なくされており、生産ができない状態が続いておりました。
現在では徐々に回復してきていますが、まだ本生産まではいかない状況です。
ロシア・ウクライナ情勢も要因の1つ
2023年7月現在も続いているロシア政府によるウクライナ侵攻も半導体不足の要因です。
ロシアやウクライナは半導体の主要原料である希ガスやレアメタルの原産地として挙げられます。
このような主要な原料が一時的に供給不安になったり、価格高騰を引き起こしたりと二次的な要因を生んでいます。
中国の計画停電
中国は世界中の機械部品や衣料品など様々な製品を製造するOEM工場が多数存在します。
エコキュートの部品の多くも中国で製造されています。
2021年の8月より中国政府は「第14次五カ年計画」という省エネ目標を掲げており、2022年〜2025年の5年で約13%もの省エネを計画しています。
中国はこの省エネ目標を一気に達成すべく大規模な計画停電を行いました。
この停電の影響は、工場の操業停止や電力供給制限で工場稼働時間の大幅な縮小など大きな影響を与えました。
エコキュートの交換時期サイクル
エコキュートは、株式会社コロナ社が2001年に世界で初めて製造を開始しました。
その後各社から続々とリリースされてきましたが、エコキュートの使用期間は約10年と言われています。
多少のタイミングの前後はありますが10年周期でエコキュートの購入数量の増加時期がやってきます。
新規での需要増加とともに2020年以降その切り替え周期のタイミングの1つであると言っても良いでしょう。
給湯器の需要に対する供給不安は政府も対策要請
経済産業省は、家庭用の給湯器需要に対して供給が遅延している現状を鑑みて次のような要請を各団体に提出しました。
要請内容
- 利用者への影響を最小限とするべく、故障時の修理対応に万全を期すとともに、仮付けの 給湯器の設置など適切な対応を行うこと。
- 給湯器の供給遅延の早期解消に向けて、取引関係のある部素材供給事業者に加えて、これ まで取引関係のない事業者からの調達も検討すること。
- 海外向け給湯器の国内への振替を検討すること。
- 今般の新型コロナウイルス感染症により、サプライチェーンの正常な稼働に支障をきたし たことを踏まえ、多面的なリスク対応を通じてのサプライチェーンの多元化・強靱化を進 めること。
- 経済産業省における給湯器の需給情報等の情報収集に協力すること。
給湯器に対して政府が安定供給対策を要請するのは過去にも例のない状況で、未曽有の事態が起きていると言えるでしょう。
更に経済産業省では、給湯器の部材調達における欠品となっているボトルネックの把握とその解消に向けた取組や代替調達先の紹介など、多岐に渡り安定供給に必要な対応を図っていくと明示しています。
政府としても給湯器は国民のライフラインの中でも必須なものであると重要視していることが伺えます。
エコキュートを製造するメーカーの生産状況
国内でエコキュートを供給している主要メーカーは、パナソニック・日立製作所・ダイキン工業・三菱電機・東芝・コロナなどが挙げられます。
様々な要因でエコキュートが不足している現状はわかりましたが、各メーカーの状況はどのような状況なのでしょうか?
一部メーカーの現状をご紹介します。
パナソニック
エコキュート製品のトップシェアのパナソニックは、2022年に上海のロックダウンなどの影響でリモコンの供給ができなくなり製品供給が一時ストップして大きな不安を呼びました。
2023年現在ではようやく前年比100%近い水準まで生産稼働状況を戻しましたが、需要の全てに迅速に対応できる状況は作り込めていません。
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日立製作所
2022年初旬から中国深圳のロックダウンによる影響で主要部品のほとんどが生産や輸送もできない状況となり大きく生産体制を崩しました。
その後一時的に生産体制は回復したものの同年8月にエコキュート製品の三分の一製品を新規受注停止の状況にして生産体制を見直しています。
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ダイキン
ダイキンも他社と同様に中国にメイン部品を依存していた傾向もあり、2022年3月以降納期遅延を起こしていましたが、政策的にサプライチェーンの分散化を進め各国に生産委託する体制を見直していますが100%の稼働までは届かない状況です。
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エコキュート不足の解消の目処は?
半導体製造の大手であるデンソーは、2023年夏以降には半導体の製造が需要に追いつくと2023年4月27日にオンライン上で開いた2022年度決算発表で明かしています。
半導体は車やスマートフォンなどへの供給が優先される傾向にありますが、前途のような発表がありましたので順次状況は回復してくると考えられます。
実際のところ2023年2月以降からエコキュートの納期がモノによっては2週間程度で納品される状況まで回復しています。
元々、生産が少ない床暖房に対応した多機能モデルや、マンション用のエコキュートなどは2ヶ月〜3ヶ月程度掛かることもあるようです。
エコキュートの納期を早めるには
エコキュートの納品時期を早くするには注文の時期を考える必要があります。
給湯器や暖房の多くは夏ではなく冬場に購入するケースが多くなります。
そのような時期は需要が増加して通常より納期が掛かってしまうことがあります。
買い替えを検討しているのであれば夏から秋など、購入が多くなるシーズンを外して購入すると良いでしょう。
しかし、故障などのタイミングは選ぶことができません。
冬になってから故障した場合でも慌てないよう、エコキュートの工事を多数行なっている販売店をリサーチするのがおすすめです。
エコキュートの本体を少数しか購入しない業者よりも、複数継続的に購入する業者の方がメーカーは優先して納品してくれるケースもあります。
また、そのような業者は事前に多くのエコキュートを在庫として所有している場合があります。
あらかじめ壊れる前にそのような優良店を探しておくと、もしもの時に慌てなくて良いでしょう。
給湯器を壊さないよう対策を!
エコキュートの納期が以前よりも早くなったので安心している方も多いかと思います。
しかしながら、現状はそれまで給湯器交換を依頼していたのに製品がなくて取り替え工事待ちなどの方が多くいます。
よって納期もまだまだ希望通りにすぐおこなってもらえる状況ではないことも多々あります。
給湯器が壊れるとキッチンやお風呂の全てでお湯が使えなくなるので、まずはそのようなことにならないように日々の点検や交換の時期を確認しましょう。
給湯器の使用期間は10年
給湯器のほとんどが耐久試用期間を10年としております。
使用頻度が高ければその分早く経年劣化が起きますし、全く使用しなくても機械的にはあまり良くはありません。
そして給湯器のほとんどが急に壊れることが多いものです。
一時的に修理をして延命しても、使用期間を大幅に超えるようであれば他の箇所にも負担が掛かり正常に動作しなくなることが考えられます。
新設してから10年前後経過した給湯器は、新しい給湯器に交換することを検討すると良いでしょう。
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過度の負担が故障に繋がる
給湯器にはお風呂の湯船の容量に見合った「号数」と呼ばれるお湯の排出能力容量があります。
二人家族用の号数の給湯器を使用していて、急に家族が増えたなどで使用人数か増えると給湯器に過度な負担が掛かってしまいます。
負担が継続的に続くと早く壊れたり不調をきたしたりするので注意しましょう。
まとめ
環境と消費者のお財布事情に優しいエコキュートですが、納期が大幅に遅延をしている要因は半導体の不足でした。
現在ではある程度納期は短縮されたものの100%の対応ができている状況ではないようです。
給湯器は使用期限が約10年と長いので、買い換えるタイミングが難しい商品です。
しかし、急な故障ではとても困る製品なので、5年に1度など定期的なメンテナンスは行いましょう。