一般的な家庭に普及されている給湯器のほとんどがガス給湯器ですが、ガスのほかにも電気を動力とした電気温水器と、自然エネルギーを動力とするエコキュートがあります。
よく電気温水器とエコキュートは比較されますが、初期費用やランニングコストはそれぞれ異なります。
電気温水器とエコキュートを検討しているけど、実際どちらが良いかわからない、という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、電気温水器とエコキュートを比較してどちらの方がお得なのか、またはエコキュートと電気温水器の違いについて、メリット・デメリットも踏まえた上で仕組みからわかりやすく解説します。
電気温水器やエコキュートは、頻繁に交換するものではないので、しっかりと両者の違いを認識し、最良の選択ができるようにしましょう。
Contents
エコキュートとはそもそも何か?
最初に、エコキュートについて仕組みからしっかり解説します。
恐らく大半の方が、「お得になる」、「環境にやさしい」というイメージをお持ちだと思いますが、なぜエコキュートがお得で環境にやさしいのか説明できる方はそれほど多くはないのではないでしょうか。
エコキュートの仕組みを理解し、電気温水器との違いを明確にすれば、自分自身でも検討する際の判断材料を持てるので、できるだけ把握しておきましょう。
熱源
エコキュートはオール電化とセットで語られることが多いので、電力を熱源として給湯を行うイメージが強いですが、実は電気だけでなく、大気中の熱も用いて給湯を行っています。
つまり、エコキュートは電気エネルギーだけでなく、大気中の熱エネルギーを使うことによって、より効率的な給湯を可能にしているのです。
給湯の仕組みとしては、まずヒートポンプユニットのファンから大気中の熱を取り込み、
ユニット内の熱交換器に送り込みます。
送り込まれた熱は、交換器内の冷媒で圧縮され高温の物質になり、貯湯ユニット内の水に熱を送ってお湯を沸かします。※仕組みはエアコンと同様です。
設置スペース
エコキュートを設置するには、貯湯タンクの他にエアコンの室外機のような形をしたヒートポンプユニットを置くスペースが必要になります。
貯湯タンクは、一般的には幅650mm奥行き750mmくらい、ヒートポンプユニットは幅740mm奥行き830mmくらいのサイズが多いです。
エコキュートを設置する際は、1m四方くらいのスペースがあると理想的でしょう。
なぜなら、本体サイズギリギリのスペースだと、設置はできてもエコキュート本体が障害となり、通り道をふさいでしまう恐れがあるからです。
どうしても1m四方を確保できないなど、狭い場所に設置せざるを得ない場合は、コンパクトサイズや薄型サイズのエコキュートも販売されています。
エコキュートのサイズバリエーション、またはエコキュートを設置する際に気をつけたいポイントについては以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
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お湯を作る仕組み
エコキュートはいわゆる貯湯式タイプで、ヒートポンプユニットの仕組みで沸かしたお湯を貯湯タンクに貯めて保温しておく仕組みです。
対して、従来のガス給湯器は瞬間式と呼ばれ、給湯器を使う度にお湯を沸かす方式となります。
貯湯式には、お湯を貯めておけるので災害時にも使える、すぐにお湯が使えるというメリットがあり、瞬間式は強い水圧でお湯が使える、湯切れをする心配がないというメリットがあります。
どちらを取るかは世帯によって異なるので、使用状況を振り返った上で、業者に相談してみると良いでしょう。
エコウィルやエネファームとの違い
エコキュートに似ている給湯システムで、「エコウィル」や「エネファーム」があります。
実際、名前は知っているが違いがよくわからないという方のために詳しく解説します。
その名の通り、両者ともエコに力を入れており、節電効果も高い製品なので、関心がある方はあわせて検討してみるのも良いでしょう。
エコウィル
エコウィルは主にガスをエネルギー源として運転する発電機です。
エコウィル本体で発電し、自宅の照明や他の電化製品に電気を供給するときに発せられる排熱を再利用することで、給湯や暖房の機能を担っています。
エコキュートの違いは給湯だけでなく、発電も行っている点ですが、
給湯するときに排熱をうまく利用するので、光熱費削減に効果が期待できます。
ただし、エコウィルは初期費用が100万円近く掛かります。
そのため、差額を回収する前に機械本体が故障する恐れもあるため、コストパフォーマンスで見ればエコキュートの方が優れていると言えでしょう。
なお、エコウィルは2017年9月30日で販売終了となっているので、同様の使用感を求める方には後述するエネファームか、エコキュートへの交換をおすすめします。
エネファーム
エネファームはエコウィルと同様、本体が発電機機能を担っているので、都市ガスを取り出した際に発生する化学反応を利用して、自宅の電気の供給を行います。
エネファームはその機能性から、日本が2030年までに目指しているCO2排出量削減に向けて、大きく期待されています。
ただし、エネファームは初期費用が約200万円かかり、ランニングコストだけで回収するのは簡単ではありませんので、コストを重視するならエコキュートを検討するようにしましょう。
電気温水器とはそもそも何か?
続いて、電気温水器の仕組みについて解説します。
電気温水器は仕組み上、エコキュートによく似ていますが、要所で様々な違いがあります。
比較検討を行うためにも、エコキュートとの違いを意識してポイントをおさえましょう。
熱源
電気温水器はエコキュートと異なり、電気だけで給湯する仕組みです。
具体的に言うと、電気をエネルギーとして、貯湯タンクの中にある電熱ヒーターがお湯を沸かしています。
設置スペース
電気温水器もエコキュートと同様、貯湯タンクのサイズが大きいので、1m四方くらいのスペースを見ておくと良いでしょう。
お湯を作る仕組み
電気温水器は電気を使ってお湯を沸かす仕組みですが、タンクの中は二層に分かれ、上層は熱湯の部分、下層が水の部分となり、下層の水が温められると上層に流れていく仕組みです。
タンクの中は満水状態を維持しようとするので、お湯を使うと水が継ぎ足され、下層で温めたお湯が上に行くように循環しています。
エコキュートと電気温水器のコスト比較【設置費用】
それでは、電気温水器とエコキュートの設置費用について比較して解説します。
電気温水器とエコキュートでは、設置に必要なものも変わるので、両者の違いを意識しながら参考にしてください。
なお、価格は3~4人家族で使用することを想定しています。
エコキュートの設置費用
エコキュートを新規で設置する場合、概ね40~50万円の初期費用が発生します。
新規で設置する場合、本体費用だけでなく土台の設置費用や電力会社への新規申請費用が発生するので、既存品の交換より費用が掛かります。
電気温水器の設置費用
電気温水器を新規で設置する場合、概ね25~35万円の初期費用が発生します。
本体代金の差額がエコキュートと異なる点で、機種によっては20万近い差額が生じる場合があります。
設置費用は電気温水器の方が安い
設置に掛かる初期費用を抑えたいなら、電気温水器の方がエコキュートより10~20万円ほど安くなるケースが多いです。
ただし、エコキュートも以前より価格が下がってきているので、どのくらいの差額が出るかは、必ず見積りを取って確認しましょう。
エコキュートと電気温水器のコスト比較【ランニングコスト】
続いて、エコキュートと電気温水器のランニングコストを比較です。
ここでは、3~4人家族で約10年間使用した場合を想定します。
エコキュートのランニングコスト
エコキュートにすると、月々の電気代が高くても1,500円ほどです。
年間にすると18,000円なので、10年間だと約18万円になります。
家族の人数が増えれば電気代こそ上がりますが、その分コストパフォーマンスも良くなります。
電気温水器のランニングコスト
電気温水器の場合、月々の電気代はおおよそ5,000~6,000円ほどです。
年間にすると6~7万円、10年間だと約60~70万円になります。
電気だけで運転しているので、どうしても電気料金に負担が掛かります。
ランニングコストならエコキュートがお得
エコキュートと電気温水器のランニングコストの差額は、月々だと3,500~4,500円、年間だと4~5万円、10年なら約4~50万円です。
ランニングコストを見ると、いかにエコキュートがお得かがお分かりいただけるのではないでしょうか。
ただし、家族構成や利用状況によっては、設置費用を回収できない恐れもあるので、
検討する際は、一度業者に相談してみましょう。
エコキュートにするメリット
エコキュートは国や自治体でも推奨されている給湯システムであり、
実際のところユーザーにもたらすメリットが多い製品です。
一般的に知られている「お得になる」「環境にやさしい」というメリットの他にも、様々なメリットがあるので、ここでは詳細について解説します。
長い目でみると電気代がお得
上記でもお伝えしたように、電気代の節約はエコキュートの最大のメリットと言っても過言ではありません。
初期費用は掛かりますが、エコキュートは月々の光熱費が安くなるので、使っていくほどお得になります。
また、家族の人数が多い世帯など、使う頻度が高い世帯こそエコキュートの効力を発揮するので、4人家族以上の家庭にはエコキュートが良いのではないでしょうか。
自治体によっては補助金がでる
エコキュートを購入すると住んでいる自治体によっては補助金が出るので、初期費用の投資を軽減できます。
補助金の金額は自治体にもよりますが、約1万~3万円が相場です。
また、エコキュートの補助金申請手順は以下の通りです。
- 自分が住んでいる自治体に補助金制度があるか確認する
- 役所の担当部署に連絡し申請方法を確認、申請に必要な書類を集める
- 事前に申請が必要な場合は書類を作成して提出し、自治体の承認をもらう
- 施工が完了したら自治体に報告し、補助金を振込みしてもらう
エコキュートの補助金を申請する際は、住民票(住んでいることの証明)や課税証明書(きちんと納税していることの証明)が必要となるので、早い段階で必要書類の問い合わせをして用意しておきましょう。
なお、以前は国が主体の補助金制度もありましたが、エコキュート本体の値下がりの背景もあり、平成22年に終了しています。
ガスと比べて安全性が高い
ガス給湯器の場合、可燃性ガスなので本体の故障や誤作動で火災を引き起こす可能性もあります。
また、機会本体の劣化が進むと、不完全燃焼が発生する危険があり、一酸化炭素中毒になって命を落とす可能性もあります。
一方、エコキュートで使用しているガスは不燃性のため、火災やガス漏れのリスクが低く、安全に使用することができるでしょう。
ただし、安全だから放っておくと故障につながり、思わぬ事故が起こる場合があるので、業者に定期的にメンテナンスをしてもらうことをおすすめします。
災害時でもお湯が使える
エコキュートはタンクにお湯を貯めておくタイプの給湯システムなので、災害が発生し、ガスや電気などのインフラが停止したときも、一定量のお湯を使うことができます。
ガス給湯器で都市ガスを使用している場合は、災害が発生するとお湯が使えなくなるので、災害時でもタンクのお湯を使えるのは大きなメリットと言えるのではないでしょうか。
また、エコキュートの本体には非常用取水栓が付いていて、貯湯タンクの残量がある限り、水道の蛇口をひねるような感覚でお湯を取り出せるので、高齢の方でも安心して使用することができます。
エコキュートにするデメリット
ここでは、エコキュートのデメリットについて解説します。
メリットに比べれば微々たるものかもしれませんが、デメリットを知らないまま使っていると思わぬトラブルが発生する可能性もあるので、しっかりとおさえておきましょう。
タンクのお湯が切れることがある
エコキュートはお湯をためておく貯湯式なので、一気にお湯を使うとタンクのお湯が切れることがあります。
湯切れを起こさないようにタンクの容量を決めるので、余程のことがなければお湯が切れることはないでしょう。
しかし、大勢の来客があったときなど、普段よりも多くお湯を消費した場合は、タンクの給湯が間に合わず、お湯切れするケースが実際に起こり得ます。
そのため、普段よりもお湯を多く消費するような場合は、タンクの容量を意識すると良いでしょう。
ガスに比べて水圧が低い
エコキュートは構造上、水圧が弱くなってしまいます。
特にシャワーの水圧に影響し、ガス給湯器から交換した方は違和感を覚える方が多いようです。
解決策としては、メーカーの高圧力タイプを選ぶか、日立が提供している水道直結の「ナイアガラ出湯」タイプにするなどがあります。
騒音トラブルになることもある
エコキュートから発せられる低周波音は、10人に1人の割合で気になってしまう人がいると言われています。
トラブルにならないためにも設置場所はじっくり検討し、場合によっては近隣に直接確認した方が良いでしょう。
定期的なメンテナンスが必要
エコキュートで多い故障の原因として、メンテナンスを怠った事による製品の劣化が挙げられます。
業者に定期的にメンテナンスしてもらうのが良いですが、浴槽フィルターの掃除など、自分でできるメンテナンスもあるので、こまめにチェックしましょう。
電気温水器にするメリット・デメリット
電気温水器にするメリットは、ずばり初期費用がエコキュートよりも安くなることです。
前述のように、電気温水器の設置費用は25~35万円ほどなので、設置費用だけで見ると、
エコキュートよりも10~20万円ほど安くなります。
一方、電気温水器のデメリットは、エコキュートよりもランニングコストが高くなるので、長い目で見るとエコキュートよりもトータルの費用がかかることです。
電気温水器は動力が電気のみなので、給湯効率がエコキュートと比べると劣ります。
また、電気のみで給湯を行う電気温水器より、大気中の熱も利用して給湯を行うエコキュートの方が地球にやさしい設計になので、環境保護の観点でもエコキュートの方が得られるメリットが大きいと言えるでしょう。
また、環境保護の観点からも国が今後もエコキュートを推進する流れが考えられます。
電気温水器が完全になくなりはしなくても、エコキュートの台数が多くなる可能性が高いです。
なので、初期費用の投資に多少の余裕があれば、今のうちからエコキュートにするのが良いのではないでしょうか。
まとめ
- 初期費用は電気温水器、ランニングコストはエコキュートの方がお得
- 長い目で見ればエコキュートは約 万円の光熱費を削減できる
- 今後はエコキュートのシェアが増えることが予想できる
見た目や仕組みなどよく似ている電気温水器とエコキュートですが、お湯を沸かす仕組みなど、中身の部分が見えてくると違いが分かります。
どちらかに交換を検討する際は、現在の自身の財政状況と将来のことを考えながら、じっくり検討すると良いでしょう。