現在、床暖房を使用されている方の多くは、ガス給湯器の床暖房タイプを使用されていますが、実はエコキュートでも床暖房を導入することができます。
エコキュートは電気だけでなく、大気中のエネルギーも利用しながらお湯を作ることができるので、ランニングコストの削減が期待できる給湯器です。
つまり、床暖房もエコキュートにすることで、より大きなランニングコストの削減につながる可能性が高まります。
ただし、エコキュートで床暖房を実現するにはメリットだけではなく、デメリットも生じます。
家庭によってはエコキュートが向いておらず、ランニングコストで初期費用を回収できないケースも存在するので注意が必要です。
そこで、今回の記事では、エコキュートで床暖房を使う時のポイントをお伝えしつつ、導入する前に確認すべき注意点について詳しく解説します。
エコキュートでの床暖房はうまく利用すれば家計の大きな助けになる可能性を秘めています。
現状のランニングコストを試算しながら、どれくらいお得になるか意識しながら参考にしてみてください。
Contents
エコキュートで床暖房を実現することはそもそも可能なのか?
床暖房と言えば従来のガス給湯器のイメージが強いですが、冒頭でお伝えしたようにエコキュートでも床暖房は実現可能です。
まず、全体的な理解を深めるために床暖房の仕組みについて解説します。
床暖房は床下に張り巡らされた温水パイプに給湯器で作った高温のお湯を流し、温水パイプにお湯が通ることで、熱が床を通して伝わり結果として部屋を暖めることができます。
床暖房の熱は冷えやすい足元からじんわりと温めるので、熱が効率よく伝わってムラなく部屋全体を暖めます。
なお、エアコンやファンヒーターは温風を部屋に循環させて暖める仕組みであるのに対し、床暖房は床を通して熱を伝えて、熱がふく射して部屋全体をまんべんなく暖めます。
※ふく射とは、熱源(今回で言うところの温水パイプ)から発生した赤外線が部屋中に反射して全体を暖めることを指します。
そして、温水パイプを通るお湯は給湯器によって作られるので、エコキュートで作ったお湯を使えば床暖房を実現することができるのです。
また、後述で詳しく解説しますが、床暖房には温水循環式と電気ヒーター式があり、エコキュートで床暖房を使う際は温水循環式となります。
床暖房の種別
まずは床暖房の種別について基礎的な部分を抑えておきましょう。
基本的にこの記事で解説するのは温水循環式の床暖房ですが全体像を理解するためにも床暖房のついての種別を解説します。
電気ヒーター式床暖房
電気ヒーター式は、床下にヒーターを設置し発熱することで部屋全体を暖めます。
なお、電気ヒーター式には電気料金が安い深夜帯に電気を蓄えて、日中に使用する「蓄熱式」、面状かチップ状の熱源を設置し、日差しなどで部分的な温度ムラがでないように自動調整する「PTC式」、電熱線付きのパネルを張る「電熱線ヒーター式」があります。
それぞれ特徴や導入コストなどが異なるため、自身の利用用途に合わせて最適な機種を選びましょう。
温水循環式床暖房
温水循環式の床暖房は、床下の温水パイプに高温のお湯を流して、そこから発生する熱を利用して部屋全体を暖める暖房方式です。
部屋全体の床下に温水パイプが張られているので、部屋全体をムラなく暖めることができます。
また、足元から部屋全体を暖めるので、頭寒足熱を実現し、体の血流を良くするなど健康面でのメリットもあります。
温水循環式暖房で使う給湯器の種類は以下の通りです。
動力 | 給湯器 | 特徴 |
---|---|---|
電気 | エコキュート ヒートポンプ(エアコン連動型含む) エネファームなど | 今回のメインであるエコキュートをはじめ、効率的に給湯できるエコ製品が多いです。 |
ガス | 暖房付きガス給湯器 熱源器 エコウィル | 多くの家庭の床暖房に使われているのがガスを動力とした給湯器です。 他の給湯器と比べて初期費用がおさえられるメリットがあります。 |
ガスと電気のハイブリット | エコワン | リンナイから提供されているエコワンはガスと電気のハイブリット型給湯器であり、両者の良いところをそれぞれ取ったモデルとなります。 |
灯油 | 熱源器 | 灯油はガスなどに比べて燃料費が安くなる傾向があるので、ランニングコストを削減可能です。 しかし、定期的に灯油を補充する必要があるので、補給の手間が生じるデメリットもあります。 |
どのエネルギーを動力とするかは、お住まいの環境や給湯器の利用状況によって異ります。
動力について悩んだ際には、実際に施工する業者に相談してみると良いでしょう。
高温式床暖房
熱源の温度が約80度まで上がるタイプです。
ガスを熱源とした温水式床暖房によく使われています。
低温式床暖房
熱源の温度が約55度くらいで留まるタイプです。
様々な熱源で使用され、暖まりにくいデメリットもありますが、フローリング材の伸縮等を抑えてくれます。
エコキュートで床暖房を実現するメリット
それでは、まずエコキュートで床暖房を実現するメリットを紹介します。
ガスと比べると導入が少ないエコキュートでの床暖房ですが、メリット面を見ていくと検討の余地が高まるので、まずは特徴を抑えておきましょう。
通常の床暖房より電気代を削減できる
そもそもで、エコキュートは月々のランニングコストを削減できることに定評があります。
エコキュートは電気料金が安い夜間の時間帯にお湯を作るので、他の給湯器と比べてリーズナブルに運用できます。
エコキュートは電気だけでお湯を作るのではなく、ヒートポンプユニットを通じて大気中の熱エネルギーも利用するため、電気だけで沸かす場合よりも給湯効率が上がり、結果としてランニングコストを大幅に削減できるのです。
そのため、多量のお湯を使用する床暖房においては、エコキュートを導入することで大きなメリットを得ることができます。
エコに使用できる
エコキュートは大気中の熱や電気を動力として給湯するため、ガスや灯油を熱源とする場合に比べて、二酸化炭素の排出量を抑えることができます。
世間では2050年までの脱炭素化に向けて二酸化炭素の削減に取り組んでいるので、エコキュートを導入し床暖房を実現することで、エコ活動に貢献できるメリットがあります。
安定した暖かさを提供できる
冒頭でもお伝えした通り、床暖房は床下に張られた温水ポンプによって効率よく安定した暖かさを提供できます。
エアコンやファンヒーターではムラが出ていた部分も、床暖房ならまんべんなく暖めることが可能です。
また、床暖房の熱はじんわりやさしく暖めるイメージなので、過度に暑くなることもなく、快適な温度で過ごすことができます。
そのため、温度の急激な上がり下がりがなく、年配の方からお子様まで幅広い層で快適に使用できるでしょう。
熱源機が必要ない
通常、床暖房を使用するためには床暖房用の熱源機が必要になります。
熱源機とは、お湯を沸かしたときに発生する熱を利用して床暖房や浴室乾燥暖房機のエネルギーを供給する機器です。
なので、お湯を直接供給しない点で熱源機と給湯器は異なります。
しかし、実際には給湯器暖房熱源機や、暖房付き給湯器などが市場に出回っているため、一般的には給湯器として括られることが多いです。
エコキュートで床暖房を使用する際は、エコキュート本体に暖房機能が付いていればOKなので、新たに熱源機を取り付ける必要がありません。
費用はもちろん、熱源機用のスペースを設けなくて良いのは、エコキュートで床暖房を実現するメリットと言えます。
安全性が高い
エコキュートは給湯する際、電気と大気中の熱を使用するので、ガスと比べて安全性が高いメリットがあります。
ガス給湯器の場合、給湯器が経年劣化などで古くなると、黒い煙が発生するケースもあり、黒い煙の中に含まれる一酸化炭素によって、中毒症状を引き起こす危険も考えられます。
エコキュートは完全に大丈夫というわけではありませんが、それでもガスと比べてリスクは軽減するので、より安全面に考慮したい方にはおすすめです。
エコキュートで床暖房を使うときの注意点とデメリット
上記では、エコキュートで床暖房を使うときのメリットについて解説しましたが、同時にデメリットも存在します。
ここではデメリットを踏まえながら、エコキュートで床暖房を使用する際の注意点について解説するので、あわせて抑えておきましょう。
初期費用が高い
エコキュートで床暖房を導入する際、多くの方の頭を悩ませるのが費用面の問題です。
そもそも、一般のエコキュートを導入するだけでもおおよそ40〜50万円ほどの費用が掛かるのに加え、床暖房を設置する費用が約60〜70万円程掛かるので、高額な初期費用が発生するのです。
確かに、エコキュートはランニングコストを削減できる優れた製品ですが、床暖房まで実現すると初期費用の全てを回収するのは難しくなります。
そのため、費用回収まで想定している方にはあまりおすすめできません。
あくまでも、床暖房を使用した場合のランニングコスト削減という認識でいた方が良いでしょう。
加えて、エコキュートで床暖房を使う際には、暖めることのできる範囲が最大で26畳程度なので、他の床暖房と比べて範囲が狭くなるデメリットもあるので注意です。
お湯切れを起こす可能性が高い
そもそも、エコキュートは沸き上げたお湯をタンクに貯めておく貯湯式タイプなので、タンクの中のお湯を使いすぎるとお湯切れを起こす可能性があります。
お湯切れはその日の利用状況によって異なりますが、使い方によっては発生する可能性はあります。
そのため、お風呂や台所のお湯だけでなく、床暖房にもお湯を使うとなると、通常利用する場合に比べてお湯切れする可能性が高くなるので注意しましょう。
お湯切れの対策としては、床暖房を使用する時間帯を、リモコンのタイマー機能などを使うなどして制限することです。
利用時間を気にせず家の至る所で同時に使用すると、お湯切れする可能性をさらに高めるので気をつけましょう。
使用頻度が高いと返って電気料金が高くなる可能性がある
上記のように、昼間の時間帯にお湯切れを起こしてしまうと、エコキュートが新しいお湯を作ろうとします。
しかし、昼にお湯を作ると、昼間の電気料金が掛かってしまうので、夜間にお湯を作るときと比べてコストが割増になってしまいます。
エコキュートがランニングコストを削減できる最大の強みは、電気料金の安い夜間の時間帯にお湯を作ることです。
そのため、昼間にお湯を沸かすとエコキュートを導入した意味が薄れ本末転倒になるので、使用する湯量についてはしっかりと計画しておきましょう。
カーペットの使用を控える
冒頭でもお伝えしたように、床暖房は床下にあるパイプからの熱で部屋を温めるので、カーペットを敷いてしまうと熱がうまく伝わらず、暖房効率が悪くなる可能性が高くなります。
また、ソファなどの家具が床に近すぎると同じく暖房効率が悪くなってしまうので、床暖房を導入する場合は家具の選定にも気をつける必要があります。
もちろん、家具の下に荷物を置くのも暖房効率を下げる原因となり得るのでなるべく避けましょう。
暖まるまでに時間がかかる
床暖房は暖まるまでに約30分~1時間ほど時間がかかる場合があります。
大半の機種はタイマーで時間設定ができるので、外出の際には帰宅の1時間前を目安に床暖房のスイッチが作動するように設定しておきましょう。
寒冷地での使用には注意が必要
エコキュートは給湯する際、外部の気温に影響され能力が低下する場合があります。
そのため、地域によっては床暖房できる面積が限られる上、満足に暖めることができないケースもあります。
そのため、エコキュートを寒冷地で使用する際は、寒冷地対応タイプのエコキュートを導入するか、他の暖房機と併用するなど工夫することを検討してみてください。
また、寒冷地では給湯配管も凍りやすくなっているので、配管を凍らせないために予防することも必要です。
配管の凍結について以下の記事で詳しく解説しているので、合わせて参考にしてください。
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一度設置したら簡単には取り外せない
床暖房は床下に設置するので、一度設置したら簡単に取り外せません。
もし将来的に床暖房を撤去したいと考えた場合、また床をはがして熱源を撤去するなど大掛かりな工事になる可能性が高いです。
そのため、床暖房を導入する際には、将来設計もふまえて検討するようにしましょう。
通常のエコキュートよりも故障する可能性が高い
エコキュートで床暖房を使用する場合、より多くのお湯を作るので、ヒートポンプユニットの運転頻度が高くなります。
そのため、一般的な家庭でお風呂や台所のお湯として利用するよりも、故障する可能性が高くなることも念頭に置いておきましょう。
もし、エコキュートを床暖房としても利用する場合は、業者による定期的なメンテナンスをするようにしましょう。
ヒートポンプ式も検討に入れるのがおすすめ
現在、すでにエコキュートを導入されている方で床暖房を実現する場合は、ヒートポンプ式もあわせて検討しましょう。
ヒートポンプ式は、基本的にエコキュートのヒートポンプユニットと同じ原理であり、大気中の熱を利用します。
効率よく運用できるためランニングコストの削減もできる上、エコキュート本体を交換する必要がないので初期費用も比較的抑えられます。
ヒートポンプ式のメリット
ここではヒートポンプ式床暖房のメリットについて解説します。
エコキュートでの床暖房とは異なるメリットがあるので、比較しながら検討してみましょう。
貯湯タンクがいらない
ヒートポンプ式は単体の熱源機となるので、エコキュートのようにお湯を蓄えておく貯湯タンクが不要です。
エコキュートを導入する方の悩みの中には貯湯タンクが大きくて設置場所に困っている方も多いので、貯湯タンクが不要なのはヒートポンプ式のメリットと言えます。
また、ヒートポンプ式は好きなだけお湯が使えるなので、お湯切れの心配なく使うことも可能です。
コストを削減できる
ヒートポンプ式はランニングコストの削減に繋がり、ガスと比較すると約半分くらいの光熱費で運用することができます。
また、新規のエコキュートが不要な分、初期費用を抑えられるメリットもあります。
工事内容がシンプル
ヒートポンプ式は、熱源機を設置してパネルを張り替えるシンプルな工事になります。
本体を交換するよりも簡単で、導入コストもおさえることができるので、すでにエコキュートを設置している方ならヒートポンプ式がおすすめです。
広い範囲で床暖房を実現できる
エコキュートに比べ、ヒートポンプ式は約3倍の範囲の床を暖めることができます。
広域にわたって床暖房を設置したい方はヒートポンプの方が適しているでしょう。
ヒートポンプ式のデメリット
ガスに比べるとヒートポンプ式の熱源機は初期費用が高くなります。
ランニングコストが削減できるので結果的にお得になる場合も多いですが、どうしても初期費用が掛かるのであらかじめ認識しておきましょう。
床暖房機能付きのエコキュート
ここでは、エコキュートで床暖房を使用できるエコキュートを紹介します。
各メーカーごとで機能などが異なるので、違いをしっかりと抑えておきましょう。
パナソニック
パナソニックでおすすめなのが「HE-D46FQS」です。
床暖房できる範囲が最大20畳で、タンク容量は470Lなのでファミリー向けのエコキュートになります。
基本的な機能に加えて、パナソニック独自の機能であるエコナビ機能が搭載されている省エネ機種です。
また、床暖房をする際には別売りの温水式床暖房パネルが必要になります。
パネルには「フリーほっと温すいW」や「You温すい」などのラインアップがあり、用途によって種類が分かれます。
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コロナ
コロナでおすすめなのが「CHP-46ATX3」です。
コロナ独自の学習機能つき床暖房によって、効率よく快適に暖めることができます。
パネルの敷設畳数は18畳、タンクの容量が460Lあるので子育て世帯におすすめです。
その他、ecoガイド、省エネ保温、スマートナビリモコンなどの機能がついているので、省エネに関心のある方には魅力的な機種だと言えるでしょう。
まとめ
- エコキュートで床暖房を実現するとコスト削減などのメリットあり
- すでにエコキュートを設置している方はヒートポンプユニット式がおすすめ
- 初期費用が高額なため、利用目的にあわせて導入を検討しましょう。
ここまでエコキュートやヒートポンプユニットで床暖房を実現するメリットや注意点などを解説してきました。
どの方式が正解、ということはないので、自身の環境や利用する目的に応じて、適した床暖房用給湯器を選ぶことをおすすめします。
また、床暖房は専門的な知識が必要なので、困ったときは業者に相談しながら最適な給湯器を選びましょう。