エコキュートはランニングコストが削減できるエコでお得な給湯器ですが、どちらかと言うと戸建て住宅に設置されているケースが多いという印象を持たれているのではないでしょうか。
実際、マンションなどの集合住宅で検討する際は、様々なルールが存在することがあるために設置を断念する方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回の記事では、マンションにエコキュートは設置できるのか?または設置する場合の条件を踏まえた上で、正しいエコキュートの選び方について解説します。
住んでいるマンションの規約上、エコキュートの設置がOKであっても、設置方法や選び方を誤ると近隣トラブルなどに発展する可能性もあります。
そのため、マンションにエコキュートを設置する際には特に注意が必要です。
現在マンションなどの集合住宅にお住まいでエコキュートを検討している方は、是非参考にしてみてください。
Contents
そもそもマンションでエコキュートは使用できるのか?
まず、マンションのような限られたスペースでエコキュートが設置できるのか、という疑問は多くの方が感じていらっしゃると思います。
結論を先にお伝えすると、マンションでもエコキュートを設置することは可能ですが、設置するための条件は戸建て住宅よりも厳しいと言えるでしょう。
なぜなら、まず第一にエコキュートは温めたお湯を貯めておく貯湯タンクと、エアコンの室外機のような形をしたヒートポンプユニットで構成されているため、貯湯タンクとヒートポンプユニットの両方を設置するスペースが求められるからです。
加えて、貯湯タンクは大容量のものだと約550Lのお湯を蓄えておくことが可能なので、本体の重量はかなりのものとなります。
そのため、例えばマンションのベランダにエコキュートを設置するような場合には、ベランダ自体が約600Kg以上の重量に耐久できる必要があるのです。
※ベランダの耐荷重についてはマンション管理者、あるいはマンション規約などに記載がある場合は必ず確認しましょう。
そして、基本的にマンションにエコキュートを設置する際にはPS(パイプスペース)に設置するのが多いですが、タンクの容量によっては設置できない場合もあるので、ベランダの設置要件についても認識しておきましょう。
また、後述でも詳しく解説しますが、エコキュートは超低周波音を発生させるので騒音トラブルに発展するケースも考えられます。
下手すると訴訟にまで発展するケースも過去にはあるので、近隣住民への配慮や騒音対策は必須と言って良いでしょう。
まとめると、マンションでエコキュートを設置することは可能ですが、様々な制約あるのといくつかの対策を施す必要があります。
詳しい内容は後述していきますので、まずは概略を抑えておきましょう。
エコキュートをマンションで導入する際の手順
続いて、エコキュートをマンションで導入する際の手順について解説します。
戸建て住宅で導入するのとは異なり、マンションならではの手順も含まれているのでしっかりと抑えておきましょう。
まずは管理組合に相談しましょう
マンションでエコキュートを導入する場合、最初の行動として管理組合に相談を行います。
マンションによっては規約によってエコキュートの設置ができないケースもあれば、冒頭で申し上げたとおり、建物の構造上エコキュートが設置不可の場合もあります。
業者との話が進んだ段階で管理組合からストップがかかると、労力が無駄になるだけでなく、最悪の場合はキャンセル料金なども発生するので、事前相談は必ず行いましょう。
マンションの規約によっては、給湯器のメーカーの指定や、施工する業者もすでに決まっている場合もあるので、相談せずに勝手に進めることは厳禁です。
設置してから撤去を命じられたりすると、撤去費用も自己負担となるので注意しましょう。
近隣住民に声掛けをする
マンションにエコキュートを設置する場合は、工事だけでも大掛かりになり、近隣住民の生活に支障が出る可能性も少なくありません。
管理組合に相談していても、近隣住民に声かけなしに導入を進めると思わぬトラブルが発生する恐れがあります。
一声だけでもかけておけば、相手にも気持ちの準備ができる上、こちらの誠意も伝わるのでトラブルに発展する可能性も少なくなるでしょう。
マンションのような集合住宅は近隣住民との共同生活のようなものなので、エコキュートの設置を自分ひとりの問題として捉えず、全体の利益が損なわないように心がけましょう。
設置スペースを確認する
冒頭でお伝えしたとおり、エコキュートは貯湯タンクとヒートポンプユニットから構成されているので、通常の給湯器よりも多くの設置スペースが必要になります。
そのため、エコキュートを設置しても差し支えないかどうか、事前に設置スペースを計っておきましょう。
エコキュートの設置タイプを選択する
エコキュートには置く場所によって、以下のようなタイプに分かれます。
- 角形タイプ
- スリムタイプ
- コンパクトタイプ
- 薄型タイプ
タイプによってサイズバリエーションがあるので、設置する場所にとって最適なサイズを選ぶようにしましょう。
なお、設置場所に対してあまりにもピッタリなサイズを選ぶと、エコキュートのメンテナンスを実施する場合などに不便が生じるので、後先の事まで考慮した設置プランを設計しましょう。
エコキュートの容量を選択する
エコキュートは使用する家族の人数、もしくは利用頻度によって容量を決定します。
なお、エコキュートの容量と選ぶ基準は以下のとおりです。
- タンク容量370L【3〜5人家族向け】
- タンク容量370L【4〜7人家族向け】
- タンク容量370L【7人以上の家族向け】
上記はあくまでも目安となるので、エコキュートを導入する際には普段の利用頻度を見直してみて、業者に最適なサイズを相談するのもおすすめです。
また、容量が大きくなると本体のサイズも大きくなるので、マンションに導入する際にはサイズと容量の両者を踏まえた検討が必要となります。
導入するエコキュートの目星をつけておく
基本的にエコキュートを導入する際は、現場調査に来た業者が適した機種を選んでくれますが、自身でもある程度目星をつけられるようにしましょう。
業者任せでも問題はありませんが、エコキュートは高額な上、頻繁に取り替えるものでもないので、あとで「こうしておけばよかった」などと後悔しないためにも、自分でも理解を深めておきましょう。
エコキュートをマンションで使用する際の注意点
次に、エコキュートをマンションで使用する際の注意点を解説します。
冒頭でもお伝えしたように、エコキュートは騒音問題などトラブルに発展するケースがあります。
導入する前に注意点をしっかりと理解し、未然にトラブルの発生を防ぐようにしましょう。
騒音対策は万全に行う
エコキュートは運転すると12.5Hz(ヘルツ)の超低周波音が発生します。
※厳密に言うと、ヒートポンプユニットから出る音です。
エコキュートは電気料金が安くなる夜間の時間帯にお湯を生成するため、丁度人が眠りに着くであろう22時頃に運転します。
そのため、人によっては音が気になって眠れなくなるという方もおり、健康被害として訴訟に発展したケースも存在します。
つまり、エコキュートを設置することで近隣住民の生活に支障をきたす恐れがあるので、マンションで導入する際は防音対策は必須となります。
なお、具体的な騒音対策は以下のとおりです。
- 近隣との距離が近くならないところにエコキュートを設置する
- ヒートポンプユニットの外側と内側に防音シートを貼る
- ヒートポンプユニットに防振ゴムを敷く
- 防音壁を設置する
ただし、防音壁については設置スペースの関係上、マンションでは設置が厳しい場合もあるので注意しましょう。
マンションなどの集合住宅の場合、戸建て住宅よりも騒音トラブルになる可能性は高まるので、エコキュートの防音対策は導入前に必ず抑えておきましょう。
なお、エコキュートから発生する音については、以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせてご確認ください。
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近隣住民へのヒアリングはしっかりとる
上記の防音対策と平行して、近隣住民へのヒアリングはしっかりと行いましょう。
事前に声をかけておくことで、エコキュートを設置するにあたってこちらの誠意も伝わるので、トラブルに発展する可能性も下がります。
エコキュート設置後も良好な関係を築けるように、ヒアリングは惜しまず行いましょう。
マンションで使用するのにおすすめなエコキュート
ここでは、マンションなどの集合住宅で使用するのにおすすめなエコキュートについて解説します。
紹介する以下の3メーカーは、マンションでも使用しやすいような機種を提供しているので、詳細内容をしっかりとおさえておきましょう。
なお、冒頭でもお伝えしましたが、マンションによっては給湯器のメーカーが指定されている場合もあります。
その場合は、以下で紹介している機種の限りではなくなるので、必ず事前に確認しましょう。
三菱
三菱のマンション用エコキュートでおすすめなのが「SRT-S184D」です。
具体的なスペックは以下のとおりです。
主な機能 | エマージェンシーストップ バブルおそうじ 沸きあげモード アシスト湯はり |
給湯方式 | フルオート |
タンク容量 | 180L |
本体サイズ | 貯湯タンク(幅430、奥行630、高さ1830mm) ヒートポンプユニット(幅800、奥行285、高さ715mm) |
容量が小さいので、1~2人家族、もしくはお湯をそこまで使わないファミリー世帯向けです。
基本的な機能が充実しているので、利用頻度が少なくて機能性を求めている方にはおすすめな製品となります。
パナソニック
パナソニックのマンション用エコキュートでおすすめなのが「HE-NSU37JQMS」です。
具体的なスペックは以下のとおりです。
主な機能 | エコナビ ソーラーチャージ機能 自動配管洗浄 |
給湯方式 | フルオート |
タンク容量 | 370L |
本体サイズ | 貯湯タンク(幅600、奥行680、高さ1810mm) ヒートポンプユニット(幅799、奥行299、高さ672mm) |
パナソニックのエコキュートは、他の機種と比べて貯湯タンクのサイズが大きくなりますが、その分4人家族でも十分使用できる容量を確保することができます。
また、基本的な機能に加えて、パナソニック独自の機能である「エコナビ」も搭載されているので、省エネ性も充実したエコキュートとなります。
加えて、住宅のエネルギー管理ができるZEH機能もついているので、マンションでも快適にエコキュートを使用したい方や、省エネに関心がある方におすすめです。
コロナ
コロナのマンション用エコキュートでおすすめなのが「CHP-S30AY1-12」です。
具体的なスペックは以下のとおりです。
主な機能 | 省エネ保温 ecoガイド 節水モード |
給湯方式 | フルオート |
タンク容量 | 300L |
本体サイズ | 貯湯タンク(幅600、奥行610、高さ1770mm) ヒートポンプユニット(幅900、奥行300、高さ650mm) |
上記の2機種のちょうど中間をとったのがコロナの「CHP-S30AY1-12」です。
設置スペースが限られているけど、バランス良く利用したいという方におすすめです。
基本的な機能が搭載されており、省エネ基準も満たしているので性能に申し分はありません。
加えて、コロナのエコキュートは三菱やパナソニックと比べて運転音が約10dbほど静かになります。
なので、マンションでエコキュートを設置するにあたり、近隣への影響を気にされている方には特におすすめです。
マンションにエコキュートをお得に導入する方法
マンションだけに限りませんが、エコキュートをお得に導入する場合はちょっとしたコツが必要です。
エコキュートは交換する機会が頻繁ではないので、お得に導入する方法を知らないと損する場合もあります。
以下で紹介する手順を参考にすれば、お得に導入できる可能性が高くなるのでおすすめです。
複数業者に現場調査を依頼する
エコキュートを導入する際は必ず複数業者に現地調査、及びに見積りを依頼しましょう。
複数の業者に依頼する理由は、価格や対応の質など、一つの業者に偏ることなく判断するためです。
一つの業者だけに決めてしまうと、どうしても適正な価格などが判断できないため、2~3業者に依頼して比較検討できる体制を整えましょう。
ただし、業者の数を増やしすぎると対応に追われる可能性もあるので、自分が対応できる範囲をうまく見極めましょう。
また、エコキュートが故障してお湯が使えないなど、緊急性が求められる場合はこの限りではないので臨機応変に対応しましょう。
設置方法やおすすめ機種など現地で業者に相談する
マンションでエコキュートを設置する場合は、素人判断だけでは難しい場合があります。
なので、マンション管理組合などが定めている規約の内容を一緒に確認しながら業者に相談しましょう。
この時、業者との話し合いを円滑にするためにも、エコキュートの設置条件を自分なりにも理解しておくようにしましょう。
現地調査を行った業者から見積書をもらう
複数業者による現地調査が終わったら、各業者に見積書をもらいましょう。
見積書を比較すると、金額にばらつきがあるのが分かるかと思います。
もしこの時点で気になる業者がいて、他の業者よりも見積金額が高いような場合は、金額交渉をしてみるのも良いでしょう。
最終的にお願いする業者を選定する
金額・対応・保証内容・アフターフォロー体制など、総合的に判断して依頼する業者を決定しましょう。
アフターフォロー体制などは、口コミなどを一部参考にするのも良いでしょう。
ただし、相性の良い業者は人によって異なるので、口コミは参考程度にとどめるように気をつけましょう。
エコキュート以外で使用されている給湯器
ここまでエコキュートについて解説してきましたが、マンションで導入される給湯器には様々な種類があります。
現在マンションで使用している給湯器を含め、その種類を抑えておきましょう。
ガス給湯器(エコジョーズ含む)
ガス給湯器は、都市ガスやプロパンガスなどのガスをエネルギー源している製品です。
マンションだけでなく、戸建てやアパートなどの一般住宅で最も使用されています。
マンションでよく見かけるガス給湯器は、玄関ドアの横にPS(パイプスペース)に設置してあるPS設置型や、ベランダに設置している壁掛け型などがあります。
また、後述詳しく解説しますが、ガス給湯器にはエコジョーズという製品があり、従来のガス給湯器と比べ効率的にお湯を作れるので、ランニングコストを削減することも可能です。
なお、ガス給湯器の交換費用は10〜30万円程です。
給湯専用や追い焚き付きなど、使用する機種によって金額に幅が出るので、自身が使用している機種と照らし合わせてみましょう。
また、エコジョーズの場合は上記金額に加えて商品代金約3~4万円、ドレン排水工事費用1万円ほど発生するので注意が必要です。
※ドレン排水工事は業者によって金額が異なるので、必ず確認しましょう。
電気温水器
電気温水器はエコキュートとよく似ており、お湯を作ったり貯めたりするのを電力をエネルギーとして行います。
エコキュートは電気のほかに大気中の熱エネルギーを利用するのに対して、電気温水器は電気のみで給湯と保温を行うことに違いが生じます。
そのため、初期費用は電気温水器の方がリーズナブルですが、ランニングコストはエコキュートの方が安くなります。
基本的な構造がエコキュートに似ているので、電気温水器がOKの場合はエコキュートを導入できるケースが多いです。
また電気温水器からそのまま電気温水器に交換する場合は24万円~、電気温水器からエコキュートに交換する場合は26万円~の費用が掛かります。
なお、電気温水器とエコキュートの違いについては、以下の記事で詳しく解説しているので合わせてご覧ください。
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石油給湯器
その名のとおり、石油や灯油をエネルギー源としてお湯を作る給湯器です。
石油給湯器には、石油を霧状にする噴露式とバーナーで燃焼させる気化式があります。
また、石油給湯器を導入する際には直圧式と貯湯式のどちらかを選択します。
ざっくり違いを説明すると、直圧式は水道水の圧力をそのまま使えるので、シャワーなどが快適に使用できます。
一方で構造上貯湯式よりも初期費用がかかる傾向にあります。
貯湯式は、直圧式と異なり減圧したお湯を供給するため、水の勢いが直圧式に比べて劣ります。
使用している環境や利用状況によって異なりますが、石油給湯器の方がランニングコストは安くなる傾向が多いです。
ただし、石油給湯器は本体費用などの初期費用が高くなる傾向にあるので、ランニングコストで回収できるかは利用状況によります。
加えて、石油給湯器は燃料切れしてお湯が作れなくなる場合もあるので、普段の使用頻度が高い家庭は注意が必要な場合もあります。
そして、選択できる種類は圧倒的にガス給湯器の方が多いので、もし現状でガス給湯器を使用している場合は、無理に石油給湯器にするメリットはあまりないと言えるでしょう。
石油給湯器の交換費用は15~30万円ほどです。
機種や機能などで金額に幅が出るので、検討する際は自身の使用環境に照らし合わせてみましょう。
エコキュートがNGならエコジョーズも検討
ここまでマンションでエコキュートを設置するケースを解説してきましたが、お住まいのマンションによってはエコキュートがNGな場合もあります。
ランニングコストを削減したくてエコキュートを検討したのに、住環境の都合で断念するのは諦めきれない部分もあるでしょう。
そんな方はガス給湯器から提供されているエコジョーズを検討してみましょう。
エコジョーズは、従来のガス給湯器が廃棄していた熱を再利用することによって、より効率的な給湯ができる仕組みとなります。
使用頻度にもよりますが、エコジョーズは従来型と比べて給湯効率が約15%アップするので、少ないガスでお湯を沸かすことができます。
ガスの量が減ることで、ランニングコストが年間で約1~2万ほど削減可能です。
ガス給湯器の寿命は約10年間なので、トータルで見るとお得に使用できるでしょう。
そのため、もしマンションの規約上エコキュートの導入が不可なら、エコジョーズなど別のランニングコストを削減できる方法を検討してみましょう。
まとめ
- マンションでエコキュートは設置できるが、規約などで制限される場合が多い
- 騒音問題など、マンションではより一層気配りが重要となる
- エコキュートがNGな場合はエコジョーズなど他のエコ製品の検討
戸建て住宅に比べて、少しハードルの高いエコキュートの設置ですが、諸々の条件をクリアすればランニングコストが削減できるなどメリットが多い面もあります。
最初は情報収集が大変かとは思いますが、管理組合などにうまく相談しながら進めてもらえると良いでしょう。