エコキュートを使用するにあたり、よく聞くのがエコキュートから発生する音のトラブルです。
実際、エコキュートから発生する音が原因で、近隣トラブルが起きて訴訟にまで発展するケースもあるようです。
エコキュートはランニングコストもお得だから導入したいけど、トラブルになることもあると聞いて導入することを踏みとどまっている、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論をお伝えすると、事前に予防策を施していればエコキュートの騒音トラブルが発生する確率を下げることは可能です。
この記事ではエコキュートが発生する音の原因を説明し、騒音トラブルになる確率を下げるための予防方法について解説します。
また、近隣のエコキュートの音に悩んでいる方向けの対応策も解説するのであわせて参考にしてみてください。
エコキュートはなにも考えずに設置してしまうと、思わぬところでトラブルに巻き込まれる危険性もあります。
近隣のことも考慮し、みんなが快適に過ごせるためにも、エコキュートの音について正しい知識を身につけましょう。
Contents
エコキュートから発せられる音の原因
それでは、まずエコキュートから発生する音の原因から解説します。
音の原因を知ることで、どうやって対策すれば良いか理解しやすくなるので、しっかりと抑えておきましょう。
ヒートポンプユニットから発生する運転音
エコキュートの騒音は、タンクではなくヒートポンプユニットから発生するものがほとんどです。
※ヒートポンプユニットとは、エアコンの室外機のような形をした、エコキュートのエネルギーを作る機械
ヒートポンプユニットは、お湯を作る際に運転音が出ますが、運転音自体は約40db(デシベル)程度でそこまで大きいわけではありません。
40dbと言うと、図書館や閑静な住宅街の音が相当し、日常でストレス無く過ごせる音とされている50dbを下回る音量になります。
※エアコンの室外機や静かなオフィスの音で50db程度です。
なので、ヒートポンプユニットの運転音自体が騒音の原因となることは少なく、むしろ適正な範囲内と言えるでしょう。
ただし、隣地が極端に近いなど、設置する場所によっては気にしてしまう方もいるので注意です。
ヒートポンプユニットから発生する低周波音
一般的に考えると、ヒートポンプユニットの運転音が騒音の原因だろうと思われるかもしれませんが、実際トラブルの引き金となるのはヒートポンプユニットの低周波音です。
低周波音とは、100Hz(ヘルツ)以下の周波数で聞こえるものを指し、この内20Hz以下の低周波音を超低周波音と呼びます。
例えば、ビール瓶の口に息を吹き込んだときに発生する「ボォー」という音や冷蔵庫の「ブーン」と唸るような音が低周波音に該当します。
そして、ヒートポンプユニットから発生する低周波音は約12.5Hz程度となります。
大半の方は気にならないレベルですが、人によっては低周波音を不快に感じ、不眠症などの健康被害を訴える方もいらっしゃいます。
また、低周波音には上記のように人によっては眠れないなどの心理的な被害の他にも、低周波音によって振動が起こるような、物理的な被害が発生するケースがあります。
後者の物理的な被害は、ヒートポンプユニットの低周波音で近くの建物に振動を伝えるので、家が揺れているように感じてしまう現象を指します。
例えば、建物近くで車がアイドリングし、その振動が建物に伝わるケースが近いイメージです。
ヒートポンプユニットの低周波音は、こういった騒音問題の原因になることがあるので、これらの要点はしっかりおさえましょう。
本体から発生する機械音
ケースとしては少ないですが、本体から発生する機械音がトラブルの原因となる場合もあります。
ここで言う機械音とは「ガタガタ」「ゴトゴト」などで、正常に動いていないときに発生する音を指します。
このような場合は、エコキュート本体が故障している可能性も考えられます。
部分的な故障か、本体の経年劣化による故障かは見分けがつき辛いので、異常な機械音が聞こえた場合は早めに業者に相談すると良いでしょう。
エコキュートの騒音が招くトラブル
ここでは、エコキュートから発生する音によって実際に起きたトラブルを紹介します。
エコキュートを検討する際は、以下のようなトラブルを招く可能性もあるので確認しておきましょう。
不眠症などの健康被害
エコキュートのヒートポンプユニットから発生する低周波音によって、「気になって眠れない」「不快に感じる」など、心理的な原因で健康被害を引き起こす場合が多いようです。
また人によっては頭痛・耳鳴り・肩こりなど、日常生活に支障をきたすレベルになることもあります。
エコキュートは電気料金が安くなる夜間にお湯を沸かす仕組みであり、どうしても人が寝静まる時間帯に音が発生するので、音が気になり眠れないというトラブルが多くなる傾向にあります。
家が震動しているように感じる
ヒートポンプユニットから発生する低周波音は、設置場所によっては家が震動しているかのように感じさせます。
震動しているように感じるのは、低周波音が家だけでなくエアコンの室外機などに伝わって共振することで、拡張していることが原因だと考えられます。
そのため、エコキュートを設置する際には、周囲に震動が伝わらないか配慮する必要があります。
近所で騒音トラブルになる
エコキュートのヒートポンプユニットから発生する運転音や低周波音は、人によっては健康状態に影響する場合があるので、近隣とのトラブルに発展する可能性があります。
訴訟に発展しないまでも、口論となり近隣関係が険悪になることも少なくありません。
特に、新しく引越してきた方など、地域にまだ馴染んでいない段階で騒音トラブルになると 厄介なので注意しましょう。
場合によっては訴訟問題になることも
近隣に及ぶ健康被害が甚大だったり、近隣との関係が険悪な状態だと訴訟に発展するケースもあります。
現に、エコキュートの訴訟について調べてみると、エコキュートの所有者に対策を求めても対応してもらえず、止むを得ず訴訟を起こしているといったケースがあります。
そのため、穏便に済ますためにも、近隣からエコキュートに対する苦情を受けた場合は早めに対応すようにした方が無難と言えるでしょう。
なぜ騒音トラブルは発生してしまうのか
エコキュートの騒音トラブルはヒートポンプユニットから発生する運転音や低周波音が主な原因ですが、エコキュートを設置する側の配慮が足りないことも原因の一つになっている場合も考えられます。
例えば、突然得体の知れない音を耳にするのと、事前に話を聞いて情報を得ている場合では音の感じ方も変わってくると思います。
もちろん、事前情報関係なしに音が気になる方はいらっしゃると思いますが、あらかじめ話を聞いているのとそうでないとでは、被害を受けている側にかかるストレスも異なるでしょう。
つまり、騒音トラブルが発生し、最悪の場合訴訟にまで発展してしまう背景には、相手への嫌悪感も含まれていると考えられます。
エコキュートの騒音トラブルを防ぐ方法
それでは、騒音トラブルを起こさないためにはどのような対処をすればよいか、騒音に対する予防方法について解説します。
エコキュートを設置する際は、周囲への気遣いが大切です。
近隣関係も含めて快適な住宅環境を保つためにも、以下の内容を抑え、対策を施すようにしましょう。
事前に近隣住民に相談する
前述しましたが、エコキュートを設置するにあたっては近隣住民への配慮が大切です。
なので、エコキュートを設置するにあたって、事前に近隣に話を通しておくのも良いでしょう。
事前に話をしておけば、実際に音が気になった場合、相手方としても相談しやすい環境ができている場合があるため、大きな問題になりにくいです。
加えて、事前に相談することでこちら側の配慮も伝わるので、近隣関係が険悪になるのを防ぐ効果もきたいできます。
また、事前相談の段階で必要な情報をある程度ヒアリングできれば、エコキュートを設置する場所の参考にすることも可能です。
事前相談は手間と労力が多少かかりますが、後々大きな問題に発展しないためにも、しっかりと行うようにしましょう。
設置する場所を検討する
エコキュートを設置する場所は、騒音の防止の観点から見ても大切です。
ヒートポンプユニットが近いと、低周波音をより感じやすくなってしまいます。
例えばエコキュートを設置した場所が隣の家の寝室から近い場所になると、エコキュートが夜間にお湯を作るたびに睡眠妨害してしまう恐れがあります。
加えて、隣の家の換気口近くに設置する場合も、ヒートポンプユニットの低周波音が伝わりやすくなるので極力避けましょう。
つまり、設置する場所を検討する際は、感覚で決めるのではなく、事前にヒアリングして隣の家に迷惑にならないような場所を検討することが大切です。
また、騒音とは種別が異なりますが、ヒートポンプユニットから発生する冷風がトラブルの原因になる場合もあります。
ヒートポンプユニットは大気中の熱を吸収して、動力となるエネルギーを作りますが、このとき、ヒートポンプユニットからは冷風が発生するので、隣の家の換気口の方を向いていると、冷風が隣の家に入り込む恐れがあります。
冷風の温度は、気温のマイナス10度レベルまで冷たくなるので、冬場では室温が下がってし まい、近隣トラブルとなります。
そのため、設置場所の他にも、ヒートポンプユニットがどの方向を向いているか、あわせて確認しましょう。
防音対策の実施
エコキュートには騒音を防ぐため、追加部品で対策する方法があります。
ここでは、エコキュートの騒音対策に役立つ、各種追加部品について解説します。
基本的は設置場所に関わらず実施するようにしましょう。
防音シート
防音シートはヒートポンプユニットの外側に貼るタイプと、内側に貼るタイプがあります。
ヒートポンプユニットの外側に防音シートを貼る場合
外側に貼る防音シートは10枚入りが1,000円くらいで販売しています。
サイズは1枚あたり50×100mmなので、ヒートポンプユニットの上部や正面の空いている箇所に50mm間隔で貼り付けましょう。
ヒートポンプユニットの内側に防音シートを貼る場合
内側に貼る防音シートは、カルムーンシートともいわれ、1枚あたり1~2,000円くらいの金額で販売しています。(基本的に10枚以上でセット売り)
防音シートの貼り方は、まずヒートポンプユニットの前面カバーを取り外します。
カバーの裏側を見てみると、空気の排出口の隣にシートを貼るスペースがあります。
多くの場合はすでにメーカー純正のシートが貼ってあるので、既存シートの形に沿って重ねるように貼ればOKです。
防振ゴム
ヒートポンプユニットをコンクリートの上に直接置くと、低周波音の振動により共振し、騒音トラブルの主な原因となります。
防振ゴムを敷くことで、コンクリートとの共振を抑えるので、ヒートポンプユニット直置きの場合は効果が見込めます。
また、防振ゴムはホームセンターやネットショップで1,000円程度で販売しているので、比較的試しやすいメリットがあります。
防振ゴムの敷き方は以下のとおりです。
1.防振ゴムをヒートポンプユニットの脚のサイズに合わせて切る
このとき、防振ゴムは4点で支えますが、ゴムを2重にするとより効果的なので、
8枚分切っておきましょう。
2.ヒートポンプユニットを持ち上げ、四隅に防振ゴムを二重にして配置する
防振ゴムは2重までにしましょう、それ以上重ねてしまうとヒートポンプユニットのバランスが崩れてしまうので危険です。
またヒートポンプユニットは50kg以上あるので、設置作業をする際は2人以上で実施しましょう。
防音壁の設置
ヒートポンプユニットの低周波音をおさえるために防音壁を設置する方法もあります。
ただし、防音壁とヒートポンプユニットの位置を近づけすぎると運転効率が悪くなるので注意しましょう。
夜間の使用を控える
エコキュートは夜間にお湯を沸かすので、人が寝入るタイミングで音が発生する可能性が高いです。
つまり、沸き上げの時間を昼間などにすれば、騒音問題が解決するパターンが多くなります。
ただし、エコキュートは夜間にお湯を沸かすことで、ランニングコストを削減しているので、夜間以外の時間で沸きあげるとエコキュートを使用するメリットがほぼなくなってしまします。
なので、夜間電力の料金が適応されるぎりぎりの時間帯でお湯を沸かすように設定すれば、これから眠りに着こうとする方の妨げにはならないでしょう。
ただし、エコキュートが沸き上げの時間帯を学習するには数週間ほど時間がかかるのでご注意ください。
エコキュートの場所を移動する
既存でエコキュートを設置している場合、状況によってはエコキュートの場所を移動するのもひとつの手段です。
ただ、エコキュートの移設をする場合、内容によっては費用が5万円以上発生する場合もあるので、できるだけ上記の方法を試してみて、それでも改善されない場合は移動を検討しましょう。
定期的なメンテナンスを実施
エコキュートは長年使用していると、故障により異音を発することがあり、騒音の原因となります。
定期的なメンテナンスを実施すれば、異常に早い段階で気づくことができるでしょう。
異音を感じたら点検・修理を依頼しましょう
エコキュートから普段聞かないような音がしたら、故障の可能性が高いので点検・修理を依頼しましょう。
特に、ヒートポンプユニットのモーターは故障すると大きい音が発生し、家の中にいても聞こえるレベルです。
騒音トラブル以前に、そのまま使い続けると故障して使えなくなる可能性も高いので、発見したらすぐに対処しましょう。
経年で壊れている場合は交換も視野に入れましょう
エコキュートの寿命は平均で10~15年程なので、使用年数が寿命に近く、修理金額が高くなる場合は交換も検討しましょう。
エコキュートの使用年数が寿命に近い場合、一部を修理してもすぐに別の部分で故障が発生し、余計な修理費用が発生する可能性があります。
※例えば、ヒートポンプユニットを修理した直後にタンクが故障するなどがあります。
そうなると、修理金額がかさんで結局本体の交換代金と変わらなくなり、本末転倒な事態も想定できるので、早めに交換を決断するようにしましょう。
既存のエコキュートを交換する場合の費用は概算で40〜50万円程です。
業者によって見積の内容が異なるので、複数業者に依頼して金額を比較すると良いでしょう。
なお、エコキュートの交換費用の目安と、エコキュートの寿命については以下の記事にて詳しく解説しているので、合わせて参考にしてください。
【合わせて読みたい記事】
エコキュートの交換で掛かる費用相場とは?
修理?買替?エコキュートの寿命や平均的な耐用年数とは
エコキュートの音はメーカーによって異なるのか?
結論を先に言うと、エコキュートから発生する音について、メーカーによる差はほとんどありません。
強いて言うなら、タンクの容量の多いタイプは少ないタイプと比較して、最大で10dbほどの音量差がありますが、騒音問題が解決するほどの差ではないでしょう。
そのため、エコキュートの音を抑制するためには、機種選定ではなく、上記で説明した防音対策や設置場所の検討に注力したほうが良いでしょう。
他人のエコキュートの音で悩んでいる場合の対処方法
ここまでエコキュートの音が原因でトラブルが起きないように、音の原因や対処方法を伝えてきました。
ただ、場合によっては自分が被害者となる可能性もあるので、近隣のエコキュートの音に悩まされている場合の対処方法について解説します。
基本的には話し合いで
エコキュートの音が原因で裁判に発展したと冒頭でもお伝えしましたが、基本的には話し合 いで解決することをおすすめします。
裁判にもなると、訴える側も費用が掛かる上、費やす時間も決して少なくありません。
冷静に話し合う姿勢を見せれば、相手側もエコキュートの防音対策や場所の検討をしてくれ るケースも多いです。
ただ、元々の近隣関係が悪い場合は、明確な証拠などがないと話を聞いてもらえないケース も想定できるので、その場合は次のステップに進みましょう。
騒音の測定
主張を伝えるために証拠が必要な場合は、エコキュートからどのくらいの音が出ているの か、音量の測定を行って結果をデータとして集めましょう。
なお、音量の測定は専用機器など容易でないか事があるため、専門の業者などに依頼しましょう。
測定結果を基に設置者に相談
測定が終わったら、数値を基にエコキュートの設置者に相談しましょう。
どのくらいの騒音なのかがわかるように、例えながら説明すると良いでしょう。
※ヒートポンプユニットの低周波音は車のアイドリングと同様など。
公的手続き
いくら交渉しても取り合ってもらえない場合はいよいよ公的手続きに入ります。
公的手続きには国や自治体が主催する委員会や審査会に申し立てる方法がありますが、時間がかかり、やりとりも煩雑なため、弁護士に相談するなど検討しましょう。
まとめ
- エコキュートの騒音問題の原因は、ヒートポンプユニットから発生する低周波音であることが多い
- エコキュートの音は近隣住民の健康状態に影響し、裁判にまで発展するケースも
- 防音対策や設置する場所の検討を含め、エコキュートを設置する際には近隣住民への配慮が大切
ランニングコストもお得で環境にもやさしいエコキュート。
今後も設置台数が増える傾向が見込まれるので、みんなが気持ちよく利用できるよう、お互いを配慮して設置するよう心がけましょう。