井戸水をすでに利用してたり、またはこれから井戸水の導入を検討している場合、一番導入効果が期待できるのはお風呂での利用になります。
また、エコキュートはランニングコストの削減に貢献することができる給湯器なので、水の使用料金が抑えられる井戸水と組み合わせれば大きなコスト削減に繋がります。
しかし、通常のエコキュートは井戸水を使用することはできず、一部の使用できるメーカー品においても一定の条件を満たしていないと保証を受けることができないなど、いくつかの制約があります。
そこで、今回の記事では井戸水に対応できるエコキュートを紹介しつつ、井戸水対応エコキュートを導入する際の注意点やポイントについても解説します。
井戸水対応エコキュートは導入する際の追加コストなど、通常のエコキュートとは異なる見方をする必要があるので、これから検討する方はぜひ参考にしてみてください。
Contents
そもそも井戸水とは何か?
井戸水は地下水から引っ張ってくる水のことを指します。
井戸水を導入している家庭は多くはないですが、意外とメリットが多いのが特徴です。
地下水は、雨が降り地中に浸透した水が長い年月をかけて土や石によってろ過されるので、天然水として利用できます。
※お店で販売しているようなミネラルウォーターも地下水の一種です。
ここでは、井戸水についてメリット・デメリットを踏まえながら解説していきます。
井戸水を利用するメリット
井戸水を利用するメリットは以下の通りです。
水を無料で使えるのでランニングコストの削減につながる
井戸水は利用料金がかからないため、特に水を多く使う家庭や、農家の方などが利用するとランニングコストの削減に繋げることができます。
一般的な水道水は、安全に水を利用するための基本料金と使用料金が発生しますが、井戸水は両方ともかからないのが大きなメリットとしてあげられます。
災害時でもポンプさえ使えれば飲料水として供給することができる
一般的に、地震などの災害が起きると水道などのインフラは一定期間止まってしまいますが、井戸水の場合は水を汲み上げるポンプさえ動いていれば地下から水を引っ張ってくることができるので、いざというときでも水が使えます。
臭いがなく飲みやすい
井戸水は水道水のいわゆるカルキ臭がついていないので、癖がなく飲みやすいのが特徴的です。
しかし、人工的な処理を加えていない分、細菌などが含まれている場合もあるので、飲料用途で利用する場合は水質検査を実施する必要があります。
水温が季節によって左右されない
水道水は、夏であればぬるくなり、冬の場合はキンキンに冷えてしましますが、井戸水の場合は外気の影響を受けにくい地下水を利用しているので、通年で水温が上下しにくいというメリットがあります。
井戸水を利用するデメリット
井戸水を利用するデメリットは以下の通りです。
初期費用が高い
井戸水は利用するランニングコストを抑えることができますが、その反面で初期費用が高くなります。
地下水を引っ張ってくるためにも水脈まで穴を掘り、穴の深さに応じて装置を設置するのに約40〜50万円ほど費用がかかります。
そのほかにも、飲料水として使用するために水質検査を行ったり、定期的に高圧洗浄してメンテナンスをする必要もあるので水道水を使用する方が安いケースも多いです。
水質の管理が必要
井戸水は自然環境の影響を大きく受けるので、設置しても必ず飲料水として使用できるわけではありません。
中には人体に害を及ぼす菌などが混在している場合もあるので、必ず水質検査を実施して問題ないかチェックする必要があるので注意しましょう。
汚れが混在していることがある
地下水は水道水と異なり、人為的な処理が加えられていないので、水の中に砂などの汚れが混在している場合があります。
フィルターを使用することで改善されますが、フィルターを定期的に交換する費用なども発生するので注意です。
通常のエコキュートで井戸水を使えない理由
基本的に多くのメーカーではエコキュートで井戸水は使用できないと表記されています。
なぜなら、井戸水には一般的な水道水には含まれていない成分が入っており、井戸水を利用し続けるとエコキュートの故障につながる可能性が高いからです。
井戸水に含まれている成分の中でも、特に故障につながりやすいのがカルシウムです。
カルシウムが水の中に多く含まれていると、お湯を沸きあげる時など、温度が上昇するタイミングでカルシウムが反応して固まり、堆積物(以下、スケール)が発生して、配管などにつまりなどを生じさせる恐れがあります。
配管が詰まるとエコキュート本体やタンクなどの故障に繋がってしまうので、経年劣化で寿命を迎える前にエコキュートが故障してしまう可能性が高まるのです。
最近では、井戸水に対応しているエコキュートも増えていますが、対応していない機種に無理矢理井戸水を使用し、故障してしまった場合はメーカー保証の対象外となる可能性が高いので十分注意してください。
また、スケールはエコキュートの配管において、いくつかの箇所で発生します。
配管が詰まる場所によってはエコキュート本体を交換する必要もあるので、井戸水を利用している家庭の方はメーカーの注意書きなどを事前に確認しておきましょう。
井戸水対応エコキュートを設置する際のポイント
まずは、井戸水対応エコキュートを設置する際のポイントについて解説します。
メーカー保証を受けれないなどのデメリットが生じる場合もあるので、必ず確認しておきましょう。
井戸水対応エコキュートを提供しているメーカーか確認する
メーカーによっては水質検査を行っても井戸水対応エコキュートを禁止している場合もあります。
検討しているメーカーが井戸水対応エコキュートを販売していなかった、といったケースもあるので、事前に確認しておきましょう。
水質検査は必ず実施する
基本的に、多くのメーカーでは井戸水の利用を禁止しています。
なぜなら、前述したように井戸水には水道水には含まれていない成分が入っており、水質検査をしないと含有量などが不明なため、メーカーとしてもどこまで責任を追うべきか判断するのが難しいためです。
なので、メーカーの保証を受けるためにも、事前の水質検査を実施することは、井戸水対応エコキュートを設置するためには欠かせないポイントと言えるでしょう。
また、検査をするためには費用が15,000円〜20,000円ほど発生し、自己負担となります。
エコキュート設置までの流れ
エコキュートを設置するまでの全体の流れは以下のようになります。
- 購入するエコキュートを決定し、設置を検討する
- 購入したメーカーの水質検査を販売店に依頼する
- 採水キットで水を採取し、検査機関に発送する
- 検査機関に到着後、約1週間〜10日ほどで検査結果が販売店に送られる
- メーカーごとに井戸水利用認定書が送られてくるので、保証書ともに保管する
- 地下水認定シールを貯油タンクのわかりやすい位置に貼っておく
こちらはおおよその流れとなるため、メーカーによっては手順や方法が異なる場合があります。
水質検査を実施する分、エコキュートを設置するまでに時間を要するため、どのような手順になるかは事前に確認しておくと、全体のスケジュールが組みやすくなるでしょう。
井戸水でも使えるエコキュートの種類
ここでは、井戸水でも使えるエコキュートのついて、対応しているメーカーごとに特徴を解説します。
井戸水を使用するためには、コストをかけて水質検査を行う必要があるなど、条件が課せられていることもあるのでしっかりとおさえておきましょう。
パナソニック
パナソニックのエコキュートは、他のメーカーとは異なり全ての機種で井戸水に対応することができます。
ただし、井戸水対応型とメーカーで認定されるためには、水道法に基づいた水質基準検査に合格して、「地下水利用認定書」を発行してもらう必要があります。
地下水利用認定書があれば、パナソニックが定めた水質基準に適合したというお墨付きをもらえたことになるので、メーカー保証とは別にスケールの詰まりによる保証が3年間ついてきます。
万が一スケールが詰まってお湯の循環がうまくいかなくなると、エコキュートの運転が停止するため、そういった場合に復旧する作業を実施してもらえます。
また、再発防止の目的から復旧後は再度の水質検査を実施して、スケールが詰まらないようにするための最適温度を計算して設定する作業も行ってくれます。
設置前の水質検査については、販売店経由で実施することが多いので、まずは購入を検討している販売店、もしくは業者に相談してみましょう。
水質検査の費用は16,500円(税込)であり、配布される採水キットで採取した水を検査機関に送付したら、約1週間〜10日ほどで結果が出てきます。
ちなみに、エコキュートを使用するのに適合しない水質だった場合は、水質検査の費用はかからないので、気になる方はまず検査してみることをおすすめします。
水質検査に適合した場合は、後日販売店に「水質検査報告書」が送られます。
そして、設置完了後に「地下水利用認定発行依頼書」を記入して販売店に申し込むと、「地下水利用認定書」と「地下水利用認定シール」が送られてきます。
この2点が、メーカーから保証されている証明となるので、地下水利用認定書は保証書と一緒に保管し、地下水利用認定シールは貯湯タンクの見えやすい位置に貼っておきましょう。
日立
日立のエコキュートで井戸水などの高硬度水を使う場合、「ナイアガラタフネス」の機能がついた製品なら実現可能です。
ナイアガラタフネスは、タンクからお湯を入れ替える量を従来の1/30までカットすることで、カルシウムなどスケールの原因となる成分の流入をおさえてくれるのが特徴です。
1回に入ってくる量が少なければスケールが蓄積するのを防ぐことができるので、配管も詰まらず通常通り利用することができるので、日立のエコキュートで井戸水を利用するならナイアガラタフネス機能がついている機種を導入しましょう。
また、ナイアガラタフネスは井戸水や高硬度水に対応していることを強みとしているので、5年のシステム保証を提供しています。
他メーカーはおおよそ3年の保証になるので、5年という長期保証はナイアガラタフネスを導入する大きなメリットと言っても過言ではありません。
ちなみに、ナイアガラタフネスはステンレス配管を採用し、継ぎ手の部分も樹脂で作られているので、汚れがたまりにくく、長期で清潔に使用できる強みもあります。
ナイアガラタフネスの対象機種は以下のとおりですので、検討に加えてみると良いでしょう。
- BHP-FW56SD
- BHP-FW46SD
- BHP-FW46SDE
- BHP-FW37SD
- BHP-FW37SDE
- BHP-FW46SDK
- BHP-FW37SDK
なお、保証を適用させるためには、ユーザー登録が必要になるため、購入後忘れずに行いましょう。
また、ナイアガラタフネス以外の機種を使用する場合は、日立が提供する検査キットで水質を調べておく必要があります。
検査キットは1,650円(税込)で、検査結果が出たら保証書と一緒に保管するだけなので、他のメーカーよりも気軽かつリーズナブルに検査ができる利点があります。
ダイキン
ダイキンもパナソニックと同様で、すべてのエコキュートで井戸水に対応可能です。
ただし、メーカーの保証を受けるためには、こちらも同様に水質検査を実施して適用基準に合格し、証明書の発行を受ける必要があります。
まずは、販売店に水質検査を依頼し、専用容器に井戸水を入れて渡せば、ダイキンが定める判定基準で検査を実施します。
※水をいれるだけなので簡単に実施可能です。
また、水質検査の費用は16,500円(税込)となっており、別途送料も発生するので、どのくらいの金額になるかは事前に販売店に確認しましょう。
専用容器を送って検査機関に到着すると、約1週間~10日ほどで結果が返ってきます。
検査の結果、水質が適合していた場合は、検査機関から水質合否判定書と地下水利用認定ステッカーが送られてきます。
無償修理を依頼する際に水質合否判定書と製品保証書とセットで必要になるので、無くさないように厳重に保管しておきましょう。
地下水利用認定ステッカーは、貯湯タンクの見やすい位置に貼っておくと、検査しているかどうかが一目でわかるのでおすすめです。
なお、地下水利用によるスケールの詰まり対応などはダイキンでは3年となるので、あらかじめ認識しておきましょう。
長府製作所
長府製作所は井戸水対応タイプのエコキュートを提供しており、井戸水対応タイプはカルシウムなど、詰まりの原因となるようなスケールが配管や熱交換機に蓄積しないようなシステムが搭載されています。
しかし、井戸水対応タイプのエコキュートを提供しているものの、実際に使用するためには水道法に定められた飲料水の水質基準に適合することが条件となるので、明確にするためにも水質検査は他のメーカーと同様行った方が良いでしょう。
また、井戸水対応タイプのエコキュートを使用していても、メーカーの延長保証を受けたい場合は、同様に水質検査を実施する必要があります。
地域によって水質検査の審査基準などが異なる可能性もあるので、長府製作所のエコキュートを検討していて、井戸水を利用したいような場合は、まずメーカーに連絡して水質検査について確認しておきましょう。
ちなみに、長府製作所のエコキュートで井戸水に対応しているのは以下の機種です。
- EHP-3703BX-I
- EHP-4603BX-I
- EHP-3703BX-I-K
- EHP-4603BX-I-K
井戸水対応エコキュートの注意点・デメリット
ここでは、井戸水対応エコキュートを設置する際の注意点を、デメリットを踏まえた上で解説します。
井戸水は一見すると水道水と変わらない運用で導入できそうですが、知らずに導入すると思わぬデメリットが生じる場合もあるのであらかじめ抑えておきましょう。
初期費用が高くなる
井戸水対応のエコキュートの最大のデメリットと言っても過言ではないでしょう。
一般的なエコキュートと異なり、設置時の配管経路が違ったり、井戸水や硬質な水を利用できるための機能やメーカーが指定する水質検査が必要だったりするので、おおよそ5〜15万円ほど価格差が生じます。
エコキュートは、ランニングコストが安くなって初期費用を回収できるのが売りですが、あまりにも初期費用が高くなってしまうと、エコキュートの寿命期間中に回収できなくなる恐れもあります。
そのため、井戸水を使用している場合や水が硬質な地域で使用する場合は、エコキュートがお得になるか判断するためにも、事前に初期費用に対するランニングコストを試算してコストパフォーマンスを検証するようにしましょう。
設置する際の手間が多い
前述したように、井戸水対応エコキュートを導入するには、水質検査の実施が必須となります。
水質検査は、販売店を仲介役としてメーカーの検査機関へ採取した水を送ったり、証明書の発行を依頼したりと様々な手続きが必要となるため、一般のエコキュートを設置するときと比べて手間と時間がかかります。
そのため、エコキュートが故障してお湯が使えないなど緊急を要している場合、このようなやりとりはデメリットの一つと言えるため、いざというときのことを踏まえて検討しておいた方が良いでしょう。
砂こし器など部品の設置が必要になる
井戸水対応のエコキュートを設置する際には、専用の部品の取り付けが必要になります。
部品の中でもほぼ設置が必要となるのが砂こし器です。
砂こし器の設置がない場合は、水に砂があまり含まれていなかったとしても、メーカー保証の対象外となるかもしれないので、必ず設置しておきましょう。
品物にもよりますが、砂こし器はおおよそ3万円ほどかかるので、設置する販売店にあらかじめ金額を確認しておきましょう。
また、砂こし器の中にはフィルターが入っており、定期的にメンテナンスをしないと詰まりの原因にもなるので注意が必要です。
井戸ポンプで水圧が弱くなったり流れが少なくなる可能性も
井戸水を汲み上げるポンプが圧力スイッチ式の場合だと、エコキュートの水圧が弱くなり、流れが少なくなる恐れがあります。
そのため、井戸水タイプのエコキュートを利用するなら、使用する水の量に応じて井戸ポンプの回転数を制御して水圧を保ってくれるインバータポンプにすることを推奨します。
しかし、インバータポンプは取り付けに約10万円程度のコストがかかってしまいます。
つまり、井戸水エコキュートは本体価格の他にも部品やポンプなどで追加費用が必要となるケースが多いので、導入する際には初期費用を細かく確認するようにしましょう。
井戸水を使用する場合は特殊条件下に含まれる
井戸水は一般的な水道水ではなく、ポンプなど特別な装置を使用して地下の水脈から水を汲み上げているので、いわゆる特殊条件下での使用に含まれます。
井戸水のような特殊条件下でエコキュートを使用するケースは他にも存在します。
ここでは、井戸水以外の特殊条件下について解説します。
塩害地域
塩害地域は、空気中の水分に塩分が多く含まれている地域で、海沿いの地域などが該当します。
塩害地域でエコキュートを使用すると錆びやすく故障の原因ともなり得るので、塩害地域専用のエコキュートを設置する必要があります。
寒冷地域
寒冷地域は、北海道や青森などの寒さが特に厳しい地域のことを指します。
気温が低いと給湯効率が下がるだけでなく、配管が凍結したりしてお湯が出なくなる場合もあるので、保温剤やヒーターをまくなど凍結防止処置をとる必要があります。
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矮小スペース
エコキュートはタンクの容量が大きいので、設置するスペースによっては隣家に密接した設置することになり、最悪の場合は騒音問題などに発展する可能も考えられます。
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エコキュートを依頼する際の手順
ここまで、井戸水対応のエコキュートを導入する際の注意点やポイントをお伝えしてきましたが、エコキュートを検討する場合、購入の手順を知っているとスムーズかつお得に購入することができます。
なので、ここではエコキュートをお得に購入するための依頼手順について、以下の手順に沿って解説します。
①複数業者に現地調査を依頼する
現在、ネット業者などを含めてエコキュートを扱っている業者はたくさんあります。
普段住宅設備機器や家電を購入している店舗や業者に頼むのもOKですが、価格の相場やサービス内容などを比較検討するためにも、現地調査や見積りは複数業者に依頼するようにしましょう。
一つの業者に絞ってしまうと、どうしても視野が狭くなってしまうので、3社くらいを目安に依頼すると良いです。
②エコキュートを設置するための諸条件を現地に来た業者に話す
エコキュートの設置方法や導入するサイズなどは、家庭によって様々です。
自宅にとって、どのエコキュートを設置するのが良いのか、素人ではなかなか判断がつかないので、現地に来た業者に相談してみましょう。
ここで、複数業者に依頼しておけば、対応の違いも比較できます。
③価格、対応、保証など様々な角度から比較検討する
現地調査が一通り終わったら、それぞれの業者を比較検討してみましょう。
エコキュートは設置後のアフターフォローまで考える必要があるので、価格だけでなく、いろんな角度から判断するようにしましょう。
④最終的に依頼する業者を決定する
いろんな角度から検証できたら依頼する業者を決定しましょう。
なお、自分だけで判断するのが難しい場合は、ネットやSNSなどの口コミを参考にするのも一つの手段です。
まとめ
- 基本的に井戸水をエコキュートで利用することは難しい
- 一部対応できる機種もあるが、水質検査など諸条件が必要となる
- 井戸水対応型エコキュートはコストや手間がかかるので、購入前の比較検討が重要
井戸水を利用してエコキュートを使う場合は、井戸水を使うメリットを活かすことができるのかを考えるのが大切です。
井戸水の利用が目的になって大幅なコストがかかったりしては本末転倒なので、導入を検討する際はいろんなシチュエーションを想定しながら検証すると良いでしょう。