電気温水器とはどんな機器でしょうか。
お湯を作るための機器の種類は豊富です。
「我が家の場合は、どの給湯機器を選べばいいの?」と、迷うこともあるでしょう。
そこでここでは、電気温水器とは何か、また電気温水器を選ぶ際に知っておくべきポイントについて、電気温水器以外の給湯機器との比較を含めながら解説します。
給湯機器の新規導入や買い替えを考えている人は、ぜひ参考にしてください。
Contents
電気温水器とは
電気温水器は、電動モーターで水を温めてお湯を作る給湯機器です。
巨大な電気ポットをイメージすると、わかりやすいでしょう。
電気温水器は、水を貯めておくタンク、つまり貯水タンクの中に、電気を動力源とするヒーターが内蔵されています。
貯水タンクに貯めた水は電気の力で、60度〜90度程度の高温になるまで、沸かしてあります。
蛇口をひねると、設定した温度になるように水を混ぜたあとのお湯が放出される仕組みです。
給湯器の種類とそれぞれの特徴
給湯器には次のような種類があります。
- 電気温水器
- 電気給湯器(エコキュート)
- ガス給湯器(エコジョーズ)
- 家庭用燃料電池(エネファーム)
それぞれ、給湯に用いる動力源や、お湯を作り出す仕組みが違います。
各給湯器の違いとお湯を作る仕組み
給湯器の種類 | 燃料 | お湯を作る仕組み |
---|---|---|
電気温水器 | 電気 | 電熱ヒーターでお湯を作る |
電気給湯器(エコキュート) | 電気 | 空気中の熱を取り込んでお湯を作る |
ガス給湯器(エコジョーズ) | ガス(機器の駆動に電気も必要) | ガスを燃焼させたり、年初させた時の熱を再利用して、お湯を作る |
家庭用燃料電池(エネファーム) | ガス(機器の駆動に電気も必要) | ガスに含まれる水素と、空気中も酸素を使って発電し、そのエネルギーでお湯も作る |
電気温水器と電気給湯器(エコキュート)との違い
電気温水器は、給水タンクに内蔵された電熱ヒーターでお湯を沸かします。
給湯タンクの中に、金属に電気を通して発熱させる機器が内蔵された構造です。
電気ポットと基本的には同じ仕組みでお湯を作っています。
一方の電気給湯器(エコキュート)では、電熱ヒーターを使いません。
エコキュートでは空気を集め、空気中の熱を交換することでお湯を作り出します。
つまりエコキュートの場合、電気はこの熱交換システムであるヒートポンプを駆動させるための動力源です。
電気温水器のように、電気によって熱を作り出すわけではありません。
エコキュートの仕組み
省エネ性能と環境負荷の低さで、注目を集める電気給湯器、エコキュートの要になるのが、ヒートポンプシステムです。
エコキュートは、空気中の熱を汲み上げて熱を交換するヒートポンプユニットと、貯水タンクで構成されています。
ヒートポンプユニットでは、取り込んだ空気中の熱を圧縮して高温化し、その熱を給湯ユニット内の水に移しています。
空気中の熱エネルギーを活用してお湯を作り出すため、電気の消費量を抑えながらお湯を作ることができる仕組みです。
電気の力だけでお湯を沸かす場合と比べると、消費電力はおよそ1/3程度と言われています。
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ガス給湯器(エコジョーズ)の仕組み
ガス給湯器(エコジョーズ)は、お湯が必要になった時だけ、必要な分量のお湯を、その都度ガスを燃焼させて作り出す仕組みです。
お湯を使う場所が複数箇所あっても、同時にお湯を使うことができるほか、お湯を大量に使用しても湯切れする心配がありません。
代表的なガス給湯器であるエコジョーズの場合は、従来、お湯を作る際に廃棄していた排気の熱も再利用してお湯を作っています。
これによってガスの使用量を節約しながら、効率的にお湯を作ることが可能になりました。
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家庭用燃料電池(エネファーム)の仕組み
家庭用燃料電池(エネファーム)は、ガスを使って自宅で発電し、同時にお湯も作る仕組みです。
都市ガスやLPガスに含まれる水素と、空気中の酸素を化学反応させることで、電気を作り出します。
この時、電気と一緒に熱が発生した熱を貯水タンクに移して、お湯を作り出す仕組みです。
ガスによって電気と熱を作り、この熱を再利用することで、省エネに貢献すると言われています。
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電気温水器のメリット
電気温水器には、次のようなメリットがあります。
- 安全性が高い
- コストパフォーマンスが高い
- 省スペースで設置できる
- 災害時の対策になる
安全性が高い
電気温水器は、電気をエネルギー源とするモーターでお湯を作り出すことから、安全性が高い給湯機器と言えます。
例えば、広く家庭でも利用されているガス給湯器は、ガスを燃やして水を温め、お湯を作っています。
もちろん安全性能には万全を期して作られた機器です。
しかし火を使うため、正しく使用できない場合は不完全燃焼を起こしたり、近くにある可燃物に引火したりといった可能性もゼロではありません。
一方の電気を熱源とする電気温水器であれば、火を使うことがありません。
着火や消化する機会がないため、火事を引き起こす心配は少なくなります。
ガスのように燃料を燃やすこともないため、不完全燃焼による一酸化炭素中毒のリスクもありません。
電気温水器であればガス漏れによるガス中毒の心配もなく、室内でも安心して利用できます。
コストパフォーマンスが高い
電気温水器は、光熱費を節約しながらお湯を沸かせる便利な機器です。
電力の自由化にともなって、電気代は節約しやすいエネルギーとなりました。
電気は契約プランも豊富です。
例えば深夜料金の設定がある電気のプランがあります。
こういったプランで電力契約し、深夜の電力が安い時間帯にお湯を沸かして保温するタイプの電気温水器を使用すれば、一層お得に給湯器を使用することが可能です。
ガス給湯器は、ガスだけでなく電気も必要ですから、光熱費がかさむことが多いです。
電気温水器であれば、使用するのは電気だけのため、電気代がお得になるプランを活用すれば、光熱費を節約しやすいでしょう。
省スペースで設置できる
電気温水器は、省スペースで設置できるのも魅力のひとつです。
例えばガス給湯器で、プロパンガスを使用するエリアの場合は、ガスタンクを保管するスペースが必要になります。
また石油温水器であれば、灯油タンクのほかに灯油を保管するスペースも用意しなければなりません。
電気温水器も給湯タンクを設置する必要があります。
しかし給湯タンクのサイズは、必要な湯量に合わせて調整可能です。
家族が少なく必要な湯量が少なければ、コンパクトな貯水タンクでも対応できます。
より省スペースで電気温水器を使用したい場合は、瞬間式電気温水器を導入するのも良いでしょう。
瞬間式電気温水器は、本体に内蔵した電熱ヒーターで、お湯を使う時だけ、必要な分量だけ沸かす仕組みを採用しています
手のひらに乗るくらいの小さな貯水タンクのものを選べば、省スペースで省エネしながら、便利に電気温水器を使用することが可能です。
またガス給湯器では、機器を屋外に設置しなければなりません。
しかし電気温水器の一部の機種では、設備を屋内に設置することもできます。
機器の設置場所の選択肢が多いので、ご自身のライフスタイルに合わせて選択するのも良いでしょう。
災害時の対策になる
電気温水器は、災害時に備えた対策でも活躍します。
電気温水器は、貯水タンクに水を貯めておく仕組みを採用しています。
そのため、万が一災害などで給水が途絶えた場合も、貯水タンクの水を非常用の備蓄水として活用することが可能です。
電気温水器の注意点
電気温水器には、次のような弱点もあります。
導入を検討する際は、ご注意ください。
- お湯が不足することがある
- 水圧が弱い傾向がある
お湯が不足することがある
電気温水器の場合、基本的には貯水タンクに水を溜めておき、夜間の電力が安い時間に沸かしておくシステムを採用しています。
そのため、当日急に使用する湯量が多くなった場合、タンク内の湯量では足りなくなる可能性はゼロではありません。
追い焚きで対応することは可能ですが、お湯を使用できるようになるまでに時間がかかるほか、契約プランによっては、電気料金が割高になる可能性もあります。
電気温水器を導入するなら、使用する湯量に合わせて適切なタンクのサイズを選ぶことや、お湯を沸かす分量にご注意ください。
使用する湯量がイレギュラーに変わる場合や、湯切れの心配を回避するなら、瞬間式電気温水器を検討するのもひとつの方法です。
水圧が弱い傾向がある
貯水タンクに貯めたお湯を使う電気温水器では、ガス給湯器と比べると、水圧が弱くなる傾向があります。
ガス給湯器では、水道管から伝わってきた水を瞬時に温めてお湯にし、水道の蛇口に送り届ける仕組みです。
水道を流れてくる水圧をほぼ維持した状態で、お湯を使うことができます。
これに比べると、貯水タンクに貯めたお湯を適切な温度に薄めながら使用する電気温水器の場合は、水道圧より水圧が下がる点は否めません。
水圧が低いと、シャワーの勢いが弱くなったり、水圧で汚れを落としたい場合に時間がかかったりする可能性があります。
日常生活に大きな支障をきたすものではありませんが、水道圧より水圧が低くなることは、記憶しておいてください。
電気温水器を選ぶポイント
電気温水器を快適に使用し、省エネ性能も最大限発揮させるためには、次のポイントをおさえておくとよいでしょう。
- 適切なサイズの貯水タンク
- 機能
適切なサイズの貯水タンク
電気温水器が湯切れを起こさないように、導入段階で適切な容量のタンクを選ぶことが大切です。
世帯人数別のタンク容量の目安は、次の通りです。
電気温水器のタンク容量の目安
世帯人数 | タンク容量 |
---|---|
1人(ワンルームマンション用) | 200リットル〜 |
2〜3人 | 300リットル〜 |
3〜4人 | 370リットル〜 |
4〜5人 | 460リットル〜 |
5〜7人 | 550リットル〜 |
浴槽にお湯を張った場合、100〜200リットル程度のお湯が必要と言われています。
お湯を入れ替える場合や、1日のうちに複数回お風呂に入る家族がいる場合、家族の人数が多い場合もあるでしょう。
湯切れを起こして追い焚きしなければならないことが増えると、電気温水器は十分に節電効果を発揮できません。
深夜帯に電気代が安くなる電気プランの場合は特に、日中の電気代が割高に設定されています。
電気代の安い時間帯に沸かしたお湯を、1日かけて使い切れるように、給湯タンクの容量を選定することが重要です。
電気温水器のタンク容量を検討する際は、余裕のある容量のものを選ぶと安心です。
サイズに悩む場合は、ワンランク上のタンク容量のものを選ぶとよいでしょう。
機能
電気温水器には、主に次の3つのタイプがあります。
- フルオートタイプ:自動で設定した湯量、湯温を維持できる
- セミオートタイプ:お湯張りと湯沸かしが自動でできる
- 給湯専用:お湯を沸かす専用
機能が高くなり、より利便性が高まるほど、本体価格や使用に伴う電気代も高くなります。
導入コストも高くなりますから、ご自身に必要な機能と予算のバランスを考えながら、選んでください。
フルオートタイプ
フルオートタイプでは、次のような機能を自動で行うことができます。
- 湯沸かし
- 温度調整
- 設定した水位でのお湯張り
- 保温
- 足し湯
- 追い焚き
手動で行う作業は、どのくらいの湯温と湯量を維持したいかあらかじめ設定することだけです。
お湯の温度が下がった場合の追い焚きや、湯量が減った時の足し湯、お湯の温度が下がらないように保温するといった機能を、全て自動で行うことができます。
忙しい日々の中で、いつでも快適な状態で入浴したい人や、家族が時間差で入浴するご家庭にピッタリです。
お風呂の状態を維持することに気を配らなくても、常に理想の状態で入浴できる、快適な暮らしが実現します。
セミオートタイプ
セミオートタイプの場合、自動で対応する機能が、フルオートタイプに比べるとコンパクトです。
- 湯沸かし
- 設定した水位でのお湯張り
セミオートタイプでは、保温や足し湯が自動でおこなわれる機能がありません。
しかしその反面で、高温差し湯機能で、湯温を上げながら湯量を増やしたり、追い焚き機能を使って任意の湯温までお湯を温めたり、自由度高く電気温水器を利用することができます。
家族によって、またその日の気分や体調によって、理想の湯量や湯温は異なります。
こういったニーズに臨機応変に対応しながら、電気代を節約するという点で、セミオートタイプは便利です。
オーダーメイドの湯量や湯温で、その時々の理想のお湯でお風呂を楽しむには、セミオートタイプが適しています。
給湯専用タイプ
給湯専用タイプは、お湯を沸かすことに特化した、シンプルさが魅力の電気温水器です。
追い焚きや保温など、特別な機能を省くことでコストもスリムアップしているため、フルオートやセミオートに比べて、リーズナブルに導入できます。
電気を動力源としてお湯を沸かす機器を導入したいが、そのほかの機能は特に必要としていない場合、またできるだけ低コストで電気温水器を導入したい場合は、一考の価値があるでしょう。
電気温水器と電気給湯器(エコキュート)どちらがお得?
いつでも電気で動く給湯器である電気温水器と電気給湯器(エコキュート)ですが、どちらの方がお得に利用できるでしょうか。
次の4つのポイントから、電気温水器とエコキュートを比較してみます。
- 経済性
- お湯の作り方
- 設置スペース
- 導入コスト
電気温水器とエコキュートの比較
比較項目 | 電気温水器 | エコキュート |
---|---|---|
月額料金(目安) | 6,000円程度 | 2,000円程度 ※1 |
お湯の作り方 | 電気 | 電気・空気中の熱 |
設置スペース | 貯水タンクのみ | 貯水タンクとヒートポンプユニットのスペース |
導入コスト | 18万円〜38万円程度 | 25万円〜50万円程度 |
※1:一般的に、エコキュートは電気温水器の1/3程度の電気料金であるという解釈に基づき算定
電気温水器は、導入コストが安価であり、省スペースで設置できるのが強みです。
一方のエコキュートは、導入コストはかかりますが、月々の電気料金が電気温水器より安価に抑えられるため、長く使うほどお得になります。
例えば、電気温水器を18万円で導入して1年間使用した場合と、25万円でエコキュートを導入し、1年使った場合、1年目にかかる費用の概算は次の通りです。
項目 | 電気温水器 | エコキュート |
---|---|---|
初期費用 | 18万円 | 25万円 |
1年目の電気代 | 7万2000円 | 2万4000円 |
1年目にかかる費用の総額 | 25万2000円 | 27万4000円 |
このケースでは、2年目以降はエコキュートの方がお得に利用できることがわかります。
電気温水器、エコキュートともに、耐用年数は10〜15年と言われています。
機器の設置スペースを確保できれば、エコキュートの方が経済性が高くなる可能性が高いでしょう。
もっとお得にエコキュートを導入する方法
環境負荷が低く省エネ性能の高いエコキュートの導入に際しては、国や地方自治体の補助金制度を活用できます。
補助金制度を利用できれば、エコキュートを導入する際にネックになりがちな導入費用の負担を軽減することも可能です。
<エコキュート導入の補助金制度例(2022年8月現在)>
諸条件は自治体ごとに異なります。
詳しくは、各自治体にお問合せください。
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まとめ
電気温水器は、電気の力でお湯を作る機器です。
火が出ないので、小さなお子さんや高齢者の方のお住まいでも、安心して導入できます。
また同じく電気を使用する給湯機器には、エコキュートもあります。
電気による給湯機器を検討する際は、補助金制度もあるエコキュートも含めて検討すると良いでしょう。